墨を塗りつつ 公演情報 風雷紡「墨を塗りつつ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    真相
    序盤から物語にどっぷり引き込まれ技量の高いキャスト陣らと脚本のサスペンスとミステリーのどんでん返しに魅了された舞台だった。素晴らしいと思う。鬼の心を受け継いだ真犯人の真意がうごめくハラハラドキドキの展開で一瞬たりとも目が離せない芝居だ。更に過去に遡って記憶を弄る演出に音響でもって区切る技はあたりいったいに幼女たちの荘厳合唱の歌声が噴水のようにはしゃいでいて、やはり素晴らしいのであった。照明も活きている。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語の序盤は説明通り。それにしても・・藤森雅彦の妻・繭美役で登場してきた蒻崎今日子の強かな悪女っぷりが素晴らしい。まだセリフは発してない段階でもその立ち姿に身体全体から底知れぬ妖気が立ちのぼっていた。

    今回は蒻崎は勿論のこと、滝こと小鷹未菜は女中という目立たないようにわきまえたワキに徹する演技が見事に光り、修治こと谷仲恵輔も相変わらずの存在感で寡黙ながら全てを見通しているような演技力で魅了し、藤森雅彦の弟・龍彦役こと及川健は気がフレタ展開から少しずつ記憶を取り戻し、結果、苦悩し決断するまでの表情は息を飲むほど素晴らしかった。

    そして龍彦の妻・真澄こと吉水恭子、小口刑事役の祥野獣一(これって本名なのか?)、最後のキーを握る奈津こと望月亜希子、そしてちょっとくだけた役の女中・八重こと大高奈津美、そして雅彦と繭美の娘・絹代役の吉水雪乃のすっかり子役としてお馴染だが、セリフの数も増えて堂々とした演技力だった。

    それぞれのキャラクターの立ち位置をきっちり守りきり、熟練されたキャストらが演じるのだから、文句の付けようはなく、終焉後、とにかく「流石はJACROW!」(違っ!)と、大満足してウキウキしながら帰宅したのだった。

    さて粗筋だが、繭美は「じじに薬を飲ませるように。」と絹代に言い付け、毒薬入りの薬を飲ませることで大旦那を殺害する。全ては家督相続の争いからだったがそんな繭美の秘密を知っていた奈津は言葉を発せないという障害からか、登場人物の誰もが彼女に関心を示すことはない。云わば家族の闇を背負った存在だ。

    だから、その後の殺人事件でも奈津を疑う人は誰一人も居なかったのだった。その後、繭美も青酸カリで服毒死し、これらの水を運んだのが絹代だったことから、刑事も家族らも真犯人は絹代と信じて疑わなかった。

    一方で龍彦は戦犯の疑いがかけられていて追われていた。同時に、龍彦は戦中に己がしたことへの罪の意識に苛まれもがき苦しんでいた。戦犯者として戦争責任は免れないことを知り、真犯人は絹代と信じて疑わなかった龍彦は絹代の身代わりとなって自主し、龍彦の親友であり現在、刑事の小口はこれらを知りながら、身代わりとなった龍彦を真犯人として受理してしまう。

    しかし、終盤、物語は反転し、絹代に毒入りの水を待たせ、裏で糸をひいていたのは奈津だったことが明らかにされるも、家族や刑事らは気付かないという深層心理を追求したミステリーだった。いつの世も目立たない、存在の薄い人物の犯罪は気付かないものだ。

    これらの物語をまるで絹代が犯人のごとく描写しながら進むものだから、観客はすっかり騙されるも、終盤の大きな反転とうねりは「お見事!」と思わず、叫びたいほどだった。素晴らしい舞台を観て至福の時を過ごしました。

    ああ、これだから舞台って素敵!

    6

    2010/08/13 13:28

    0

    0

  • 風雷紡>
    やはり親子でしたかー(^0^)将来が楽しみですね。

    >私は制作は作品を商品にする大切な仕事だと思っています。

    同感です。その通りですね。

    >そこから生まれる様々な感情が次の作品の礎になります。

    ワタクシ達、観客も素晴らしい舞台を観て、様々な想いにふけります。
    公演と重なった過去の苦い思い出だったり、現在の状況だったり・・・、更にこれから歩むであろう道筋に光を頂くこともあります。そういった意味において観客と劇団は同士のような関係だとも考えています。こちらこそ、次回も楽しみにしていますね。

    2010/08/19 17:11

    実は今回初の親子共演でした。←全く絡みはありませんでしたが。苦笑。
    いやはや共演者スタッフに支えられてなんとか千秋楽を迎えることが出来ました。
    ありがたいお言葉、傷み入ります。
    私は制作は作品を商品にする大切な仕事だと思っています。
    みんなの思いの籠もった作品をまたお届け出来るようがんばりますね。
    皆様のコメントは賛否に関わらずみな大切に受け取らせていただいています。
    そこから生まれる様々な感情が次の作品の礎になります。
    今後ともご意見お待ちしています。
    本当にありがとうございました。

    2010/08/19 12:25


    風雷紡>
    >実は以前大会用に脚本提供したご縁で相方てつが現役教師をしてる学校に演劇部の講師として関わらせていただいています。

    なるほど・・、そういうご縁でしたか。最近の小劇団の方たちは吉水さんのようなお考えの方が多いようで、次世代の育成の為に観劇の割引料金を設定したり、同じくワークショップを開催したりして努力していますね。素晴らしいです。

    これから始まる高校演劇サマーフェスティバルも非常にレベルが高く、指導する教師の力量も目を見張るほどです。指導する有名な教師が転勤するとその先の高校がまた上位にランクインするというなんだか、甲子園をめざす高校野球のようなさまですが、高校演劇の関東大会のレベルはプロ並みですね。(^0^)

    >背中を見せねばならない生徒たちのためにもこれからも質の高い舞台を作れるように役者、制作、脚本家、プロデューサーとして精進します。

    役者も大変ですが、制作の仕事が一番大変なような気がします。とにかく無償での雑用ですからねー。笑
    そして一つの舞台をゼロから作り上げ公演するまでに至る経緯を考えますと、本当に尊敬します。小劇団の舞台を拝見させて頂き、ちょっとだけ内情も解ってきますと、とてもとてもワタクシには出来ない事だらけです。そんな劇団に対して評価を☆1こ、☆2こ、なんてつけてしまうのですから、なんとも気の毒ですが、そこはそこ、鬼になって付けています。苦笑!

    そうしませんと、「ここが受け入れられなかった」、という基準が理解できないまま、劇団は「考える」こともなく「これでいいのだ」と納得してしまうような気がするのですよ。
    偉そうに物を言ってしまっていますが、ワタクシは他のサイトでもユーザー登録し、そこのユーザーが小劇場の舞台に目覚め、こりっちにユーザー登録していますから、まあ、少しは役にたっているような気がしています。観客が増えれば小劇団もおのずと活性するでしょうから。

    ちなみに絹代役の吉水雪乃さんは貴女のお子さんですか?
    親子そろって美人で羨ましいです。(^0^)

    2010/08/17 12:25

    みさ様

    本当にありがとうございます。
    実は以前大会用に脚本提供したご縁で相方てつが現役教師をしてる学校に演劇部の講師として関わらせていただいています。
    なかなか小劇場のお芝居をみる機会のない子達に生の舞台を是非観て欲しくて。

    知り合いの役者やスタッフに声かけしてとかく指導者のない我流になりがちな生徒たちにワークショップなども開いています。
    少しでも次の世代に繋げていければ良いなと微力ではありますが…。
    背中を見せねばならない生徒たちのためにもこれからも質の高い舞台を作れるように役者、制作、脚本家、プロデューサーとして精進します。
    本当に貴重なご意見ありがとうございました。

    2010/08/17 08:31


    風雷紡>
    コメントありがとう。

    >脚本、演出、キャストもとにかく濃密で緊張感のある空気作りを目指しました。

    実に素晴らしい舞台でした。ワタクシの好みのどっしりとした確実な舞台でした。見応えがあって幸せな気分で帰宅しました。有難うございます。

    >そこにうまくあの時代のやるせなさや『家』をめぐる切なさが織り込められてお届け出来たならば幸いです。

    ええ、カナリアの演出もお見事ですし、実験台として小動物で試していた伏線もソツなく回収し、なにより、今では考えられないお家大事の情景も破壊力も見事でした。ほんと、素晴らしい!
    更に大絶賛したいのはキャストらの演技力でした。
    当日、中学生?らしき生徒さんが舞台の前で観てらっしゃいましたが、先生の生徒さんですか?
    舞台挨拶の時に誇らしげにチラッと見てらしたのが、微笑ましかったです。
    生徒は幸せですね。自分の先生があのような舞台を作り上げたのを身近に感じることができる。
    一番崇高な授業ではないでしょうか。

    次回も楽しみに期待していますね。これからも頑張ってください。




    2010/08/16 22:09

    ご来場いただきまして本当にありがうございました。
    ご感想もありがとうございます。
    脚本、演出、キャストもとにかく濃密で緊張感のある空気作りを目指しました。
    そこにうまくあの時代のやるせなさや『家』をめぐる切なさが織り込められてお届け出来たならば幸いです。

    2010/08/16 19:55

このページのQRコードです。

拡大