蝉の穴 公演情報 13号地「蝉の穴」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「蝉の穴」とはあの世とこの世の狭間
    序盤、不審な男が現れるシーンから。しかし、この男が靴を履いていないという演出からこの世のものではないと察する。物語は「蝉の穴」を異次元の空間、狭間と例えて「蝉の穴」を上から覗いた場面とその穴から上を見上げた場面を交差させながら不思議な世界に誘う。相変わらず、観客に想像させるという構成は秀逸です。

    以下はネタばれBOXにて。。(公演後、酒が飲める、酒が飲める、酒が飲めるぞ~♪)


    ネタバレBOX

    とある高層マンションの出入り口付近に不審な男が現れる。この男は地面に這いつくばって、かつて焼夷弾で焼かれた自身の記憶をまさぐる。そして地から天を仰ぎ「まるでここは穴の底みたいだ、空が丸く見える。地上には、こう、穴が空いていてここがその中だ。どうしてもそう思えてしまう・・」と呟く。この男は何度も死んで何度も人生を繰り返した為に、記憶が曖昧で解らない。

    一方で家族のために自殺した男・田中とその男の娘、そして娘が慕う車椅子生活の女(タバコ屋のおばさん)がこの穴の中で不思議な体験をする。この穴が、時間軸の狂った世界で生きてる娘と死んだけれどこの世に想いを残す者が交差して思い残したものを、あるいは父の死に疑念を抱いていた娘の感情を昇華させていく。

    父が娘を思いやる心と、娘が父の死因に確信がもてなかった思いをまるで「蝉の穴」のようなのっぺりとした仄暗い空間の中で癒して癒されていく。そう、こうして二人と、この二人に関わる者達は、まるで一筋の光を求めて這いあがる蝉の幼虫のようだ。そうしてこの幼虫もやがて蝉となって世界を飛び回るのだ。しかし、その飛び回る一瞬より暗い穴ぐらで過ごす6年は幼虫にとっては案外、楽しいのかもしれない。

    あなぐらがこの世とあの世の狭間なら、その空間で交わす四匹の川蝉。

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    2010/08/05 11:34

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