「溢れる」 公演情報 プロデュースユニット・カムパネルラ「「溢れる」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    説明にある涙が溢れる女と涙を流さない男、どうして そうなったかという原因というか理由を解き明かしながら、二人の繋がりを抒情的に描いた青春群像劇。二人は旧知の仲というか、親戚関係にある。物語は、男の或る事故が原因で二人の感情の揺れ、感受性の度合いが違ってきた。全体的に丁寧な作りで好感がもてる。

    物語は<涙のソムリエ>が経験した事例解説といった展開で紡いでいくが、それはプロローグとエピローグでその旨の台詞があるだけ。構成としては、あまり重きを置いていないよう。むしろ、事例解説として紡いだ内容が、<涙を流す 流さない>といった ありふれたことに意味を見出しているところに面白さがある。それが「感受性が豊かだね」「優しい人だね」VS「心が死んでいる」「冷たい人だ」という対照的な人物を立ち上げ、観客に問い 考えさせる。それぞれの立場のシーンを描き、そのどちらにも肯いてしまう説得力ある言葉だ。

    内容は勿論、感受性の豊かさを表現する場面では、人のノートまたはメモの一部を奪うような 比喩的な描き方をしており巧い。感情移入の度合い、その整理出来ない感情を仕事(メモを捨てられない)に絡め表している。二人の男女をメインストーリーとすれば、人の涙を見るのが好き、いや流れる涙から、その人の物語(人生)を覗きたいという、変わった嗜好?の男のサイドストーリー。その二つの物語を巧みに繋げ、謎解きのように興味を惹かせる。総じて若い俳優陣だが、心情・深層表現の巧さ、時に面白可笑しい場面を挿入し 飽きさせない工夫が好い。
    (上演時間1時間35分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は左右で色彩が異なる、そこにすぐ泣く 泣けないといった違いを表しているよう。舞台技術は不穏というか不安になるような音響と優しく奏でるような音楽、その効果音が印象的だ。全体的にフワッとした感じ、そこが瑞々しいといった感じになっている。

    メインストーリーは、すぐ泣いてしまう女性と泣くことが出来ない男、その2人の心の在りようを抒情的に描いている。2人は従兄妹、そして従女は 学生 もしくはもっと幼い時から従兄のことが好きで、今でも慕っている。この男性が、高校の時に事故に遭い サッカーをあきらめざるを得なくなる。この時、男はショックで泣きたかったが、先に彼女が泣き 自分の遣る瀬無い気持を持っていってしまった。男は泣くこと(涙)を奪われ、女は感情移入が激しく泣いてばかり。

    サブストーリーは、人の涙に そのひとの人生が見える。人の人生を覗き見るといった嗜好?の男が、涙のカウンセリング講習会に通い続ける。涙の味は、その人の人生の味わいか。涙のソムリエを称しているカウンセラーが、泣いてばかりいる女性の原因・理由を探ろうとするが 手がかりがつかめない。そこで講習会に通う男の力を借りて…。

    泣くことは、仕事のモチベーションが下がり非効率、一方 泣いてスッキリして前向きになれるといった議論めいたものがあるが、考え方次第の理屈付けのよう。2人の思いがぶつかり、過去の出来事(もしくは思い違い)が洗い流されるかのようなラストシーン。予定調和であるが 何となく清々しく気持良い好公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/04/06 10:17

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