結晶 公演情報 劇団5454「結晶」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     ゲノム編集によって新生児のさまざまな身体性、知力などを操作できる世界の物語。(追記11.19)

    ネタバレBOX

     舞台美術は至ってシンプル。板中央に天井から太い水柱を連想させるような円柱がそそり立つ。この円周をドーナツ状に囲むように椅子ほどの高さで数十cm幅の壁が取り巻いている。これが人工子宮だ。オープニングでは客席側に椅子2脚が置かれている。
     時代、場所は特に指定なし。ゲノム編集によって疑似胚細胞と幹細胞から作り出した精子を結合させることで受精させる為、性行為は不必要である。大多数の人々は既に性行為を野蛮なものと見做し軽んじて居る為、結婚することや指輪交換することも殆どなく男女の身体接触は軽いキスやハグであり、新生児は人工子宮で誕生しベビーラボで育つ。無論、数は少ないものの実際に女性の身体から産み、育てることを選ぶカップルもある。前者即ちマジョリティーは、性差に関係なく母にも父にもなれるし、個別の身体に負担が懸かる訳でもないから経済状況に応じて多くの子の親になることが可能だが、その分ラボに頼り切って結果的には現在の我々にとって普通な親子関係の親密さなどは育まれ難い。またゲノム編集された新生児の2世、3世になると寿命が短くなるという症例が多数報告されてもいるが、ゲノム編集で得られる高知能、理想的身体獲得の欲求は強く結果的には、親となる者のエゴが勝っている社会でもある。
     この物語で最も面白い点は、主任研究者の娘による父への造反の形式であろう。主体的即ち自主的である少女が大人である父に対抗するには基本的に論理によるしかない。なんとなれば経験則に欠けるからである。そして経験を積むことによって獲得される社会関係の中での論理の用い方を未だ知らない若者にとって論理の唯一の展開は先鋭化することでしか在り得ない。その必然的結果が人口子宮の破壊である。つまり娘の反抗に早くから気付いていれば優秀な研究者としての父はこの結果を予測し得たであろう。父の台詞にあるようにそれをして来なかったが故の結果であったのは、当に皮肉だがそこまで観客に感じさせるという意味で面白い作品であった。この少女のように自分の頭で考えることのできる人間にとってとても分かり易い。キチンと現在至り付いている科学的知見を調べ自家薬籠中のものとしていると思われる劇作家の作品でもあるから、観るだけで科学的知見のあらましも良く分かる作品だ。

    1

    2023/11/18 12:39

    0

    3

  • 皆さま
    大変遅くなって申し訳ありません。
    ハンダラです、追記しましたご笑覧ください。

    2023/11/19 12:53

このページのQRコードです。

拡大