浦島氏の教訓 公演終了 ご来場御礼 公演情報 殿様ランチ「浦島氏の教訓 公演終了 ご来場御礼」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    不意打ちの連続。
    劇的な展開になりそうになると振り出しに戻り『こういうことは普通にありそう』な話を1からはじめることがミッションであるかように、素朴な場面描写がちまちまと繰り返される。
    ストーリーの面白さで舞台を牽引していくというよりも、どちらかといえば役者の所作や何気ないひとことにスポットライトがあたっている感じ。
    派手さはないけれど、地に足のついた面白さ。映像と音楽のセンスも抜群。
    からくり仕掛けの舞台装置にもきっと心ときめくハズ。
    近頃人生に疲れているひとたちに是非おススメしたい舞台。思わず二ヤリすること必至です。

    ネタバレBOX

    風呂なしオンボロアパートの一室から殺人事件の犯人が立ち寄るかもしれない元恋人宅を張り込みをしている刑事たち、所轄の警部、クリーニング店店員らのエピソードを中心に描いていく話。

    物語にひとつの筋を通すというよりも、ひとつの場所でいくつもの場面を紡いでいくスタイルで、舞台中央にある押し入れの扉が『どこでもドア』になっていて、扉を出入りすることで場面が変化したりする。
    扉の向こう側の背景が、押し入れになったり玄関になったりする舞台装置のカラクリがのび太の押し入れに住んでいるドラえもんみたいでワクワクした。

    機材やらテーブルやらを持ちこんで張り込みの準備を整えてからというものの、職務を全うし、地蔵のように椅子に座り夜通し張り込みつづける真面目な刑事がいる一方で、夏合宿に来たようなノリなのか張り込みを放棄して寝るフリーダムな若造の刑事がいたり。のっけから水道が止められていてトイレが使えない!って大騒ぎする刑事がいたりするのが面白い。

    駅のホームで体格の良い男数名にボコボコに殴られていたクリーニング店店長を、勤務時間外だったという理由で助けなかった十勝刑事は上司の沢木刑事から、例え勤務時間外であったとしても、困っているひとがいたら助けることが常識だし、そんなことは言わなくてもわかるだろうと御託を並べ、勤務中だったら助けたか?と問う。すると十勝は「モチベーション次第では。」と答える。世代間の違いだろうか。脂の乗った上司から『常識』の差異について怒られる部下というシチュエーション、あるあるとおもった。
    また、十勝のスルーした一件が、いじめられている亀=クリーニング店店長、浦島太郎=十勝に置き代えた『もしも浦島太郎が亀を助けなかったら』ヴァージョンの再現だったのかな、とおもうと役者の所作がこれまでとは違った風にみえてきて、より楽しめた。

    一方、店を閉めて実家へ帰ることになったクリーニング店店長に次の仕事を探すように言われたアルバイト店員の朝倉が、『姫と出会っていなければ浦島太郎はあんな思いをしなくてすんだ。』と主張していた店長に、自分の気持ちを竜宮城の姫になぞらえて『浦島と過ごした時間を忘れてほしくなくて、玉手箱を渡した姫の気持ちがとてもよくわかる』と店長に告白し、店長の田舎連れて行ってほしいと頼むシーンは、とってもチャーミングだった。浦島太郎がこんなに胸がキュンな話だとは想像もしていなかったので、驚いた。
    この後、クリーニング店店長のせいで上司から怒られたと被害妄想に陥った十勝がふたりのもとへやってくるラストでは、悲劇にもつれ込む予感がするのが興味深い。朝倉が姫、店長が亀だとすると浦島太郎(運命)には逆らえない、ということなのだろうか。

    部下に麻雀の駒なんか買い与えたりして一見イイ人そうに見える鍋島刑事が、「世の中のすべてのことはじゃんけんで決まるものだ」と主張して、事件を自分の手柄にしようとするわるいひとで。
    こういう上司に騙されないようにしよう。というのが個人的には一番のいい教訓になった。笑

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    2010/06/30 23:39

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  • みささま
    コメントありがとうございます!

    >「なんで箱を開けたのかなー?」って聞いたら、「欲の為」って

    ごもっともです!
    開けるな、と言われると開けたくなるのが人間てヤツですよね・・・。

    >「玉手箱の中は乙姫様のいる夢の世界だから、そこから離れてほんとうの世界に戻った浦島はほんとうの年齢に戻っただけさー、
    うはははーー!!」って魔法使いのように脅かされてびびって泣きました。

    竜宮城の宴を楽しんだ代償として、現実を超越してしまった過ちを埋め合わせるための老い。何だかわかる気がします・・・

    >で更に、「浦島のように遊んでばかりいるとそうなる。」というやたらに末恐ろしい教訓をぶちかましてました。

    それは名言ですね!恐ろしいですが凄まじい説得力です!!

    おとぎ話って、読むひとによって解釈をアレンジできる自由度がありますよね。
    ちなみに私が子供の頃に親から教えてもらった浦島太郎の教訓は「欲張るな。」でした。
    イジメラレタ亀を助けた時に亀からは礼を言われたのだから、
    それ以上の何かを期待して竜宮城に行ってはいけなかった。そうしなければ浦島は何不自由なく平凡に暮らせた、との事です。
    どうして箱を開けたのか?についてはみささまのお母様と同じ意見です。

    私もこの芝居はとても楽しく拝見させて頂きました。
    気張っていないのに、脱力系でもない、絶妙な笑いのさじ加減がとても好きでした。

    2010/07/06 02:51

    >浦島太郎がこんなに胸がキュンな話だとは想像もしていなかったので、驚いた。

    思わず、ニタリ・・と笑ってしまった。よくよく考えたら浦島太郎の物語って神秘的だけれど、大きなお世話のような気もする。
    ワタクシがちっさい頃、不条理という言葉すら知らなかったちっさい頃、浦島太郎を読み聞かせてくれた母に「なんで箱を開けたのかなー?」って聞いたら、「欲の為」って説明されて、「なんで煙がでてお爺さんになっちゃたんだろー?」って更につっこんだら、「玉手箱の中は乙姫様のいる夢の世界だから、そこから離れてほんとうの世界に戻った浦島はほんとうの年齢に戻っただけさー、うはははーー!!」って魔法使いのように脅かされてびびって泣きました。
    で更に、「浦島のように遊んでばかりいるとそうなる。」というやたらに末恐ろしい教訓をぶちかましてました。
    だから、未だに浦島の物語はグリム童話よりも怖いと思ってるのです。
    そもそも子供に説明する仕方が間違ってる。と今、そう思います。
    やれやれな母でした。苦笑!

    舞台の浦島はコメディだったから楽しめた!笑

    2010/07/05 12:15

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