犬と独裁者 公演情報 劇団印象-indian elephant-「犬と独裁者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    劇団印象-indian elephant-鈴木アツト氏の脚本・演出で評伝劇を上演するのは5作目。その「国家と芸術家シリーズ」4作の評伝劇から次なる評伝劇のスタイルに挑んだのが、本作である。国家と芸術家シリーズは、主人公の生涯をその時代(状況)に重ね合わせた通史的な印象を持っていたが、本作は作家の生涯をその作品を通して時代を切り取ったスタイルにしており、一層 幅と深みを増した公演になっている。

    本編に主人公である作家ミハイル・ブルガーコフの代表作を劇中劇のように取り入れていることから、如何にも芝居がかった演技になっている場面があり、本編の演技との関係では不自然・違和感を覚えるところがある。その調和というか調整に腐心したのではなかろうか。その意味では 同じロシア作家・アントン・チェーホフの「かもめ」や「三人姉妹」等であれば、自然とそれとなく分かり合点がいくところ。しかし 本作の魅力は、ミハイル・ブルガーコフの作品を通して、歴史に名を残したスターリン、それも独裁者としての国家観を描くという着想にある。それまでの評伝劇…芸術(作)家という個人の直接的な観点 ではなく、作(芸術)品という媒介を通して、より一層 作家と作品そして国家の関わりが鮮明に浮かび上がる、そんな重層さが魅力だ。さらに冷徹・客観的に国家観をみる、そんな観察眼のような印象を受ける。ちなみに<眼>と言えば、舞台美術が<眼>を思わせ、物語(内容)に対するセットの拘りを感じる。

    ミハイル・ブルガーコフについては、当日パンフに ある程度詳しい紹介があり、より詳しくはWikipedia等ネット情報で。本作は、説明にもあるように「モスクワ芸術座からスターリン生誕60周年を記念した”スターリンの評伝劇”を書くように依頼される。その二年後、病気でこの世を去る。本作では、この晩年の二年間を描いている」とある。若かりし頃の内容は、彼の作品「犬の心臓」「巨匠とマルガリータ」という批判・風刺を用いて描いているよう。彼の生涯と作品が付かず離れず寄り添うように描かれ、その先に独裁者(国家)を見据えている。劇中 スターリンは登場しないが、演劇という虚構性をもって <詩>では民族を超えることができないが、<死>で国家建設を成し遂げる…そんな強く印象的な台詞を言わせる。まさに虚実綯交ぜの力作だ。

    劇団印象-indian elephant(鈴木アツト氏)は、「国家と芸術家シリーズ」という硬質 骨太作品を上演する前は、別の劇作 例えば子供向けや私小説の戯曲化だったと記憶している。常に新たな試み 挑戦をしており、先にも記したが 本作も違ったスタイルの評伝劇を模索している。自分的には好感が持てる仕上がりになっており観応え十分だ。
    (上演時間2時間10分 途中休憩なし) 追記予定

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    2023/07/29 09:46

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