橋の上で 公演情報 タテヨコ企画「橋の上で」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    実際に起きた連続児童殺害事件を背景に描いた社会派劇。

    ネタバレBOX

    2006年に起きた秋田児童連続殺害事件を背景に、登場人物や社名等をフィクションに置き換えている。舞台を事件から20年が経った地元メディアに設定し、事件当時の回想や登場人物の過去を語ると同時にシーンとしても舞台上で見せていく。
    リサリーサ演じる藤井あかりは、殺人事件の犯人とされる役の朴訥さと儚さを好演していた。舞台美術と照明も印象的で、出演者による場面転換のスムーズさとも合わさって、転換の多い本公演の各シーンを観客が理解する助けとなっていたように思う。美術・照明はこのテーマでいてリアリズムに依らず、幻想的な雰囲気を構築していたのも成功していたように思う。
    脚本については疑問を感じた。物語の軸となる地方メディアや加害者については多面的に描いていた一方で、警察や裁判所など、特に警察については無能で高圧的で人間味のないキャラクターになってしまっていた。意図的にそう描いたのだろう。そこに作者の現場の警察制度や司法制度に対する主張が見て取れると解釈しても良いが、“体制側”もまた一人一人の総体である以上、踏み込んで描いて欲しかった。もう一点、加害者の精神疾患の描き方について。加害者が家族や社会に抑圧され、精神的に追い詰められていく様子は丁寧に描かれており、同情する観客も多いであろう。しかし、こと殺人事件においてはその精神疾患がかなり大きな要因として描かれているように感じた。その点を強調する必要があったのかは今でも疑問に思っている。精神疾患と重大犯罪を結びつけて論じるのは、実際の事件を元にしていたとしても、むしろ実際の事件を題材としていたからこそ、より慎重に扱うべきであったのではないかと今でも考えている。

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    2023/06/09 19:56

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