「4…」 公演情報 四分乃参企画「「4…」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     原作はつかこうへい、今作の脚本・演出は劇団四分ノ三の清水みき枝さん。部長刑事役に鈴木克彦氏、婦人警官役に谷菜々恵さん、速水刑事役に山城直人氏そして容疑者・大山役に斉名高志氏の4名。ご存知の方もいらっしゃるであろうが社会人劇団ThreeQuarterは2024年12月を以て解散が決まっている。今回の公演はカウントダウン公演の4。

    ネタバレBOX

    スリクオの後継組織となるのは四分乃参企画、本拠地は長野県の小諸に移るが演劇活動は続ける。
     げに儚きは、何ら命の痕跡すら残さず移ろい流れ、常住するものなど何一つ無く変わり果てその痕跡すら残さず流れ去る、我ら生きとし生けるもの総てがこの条理から逃れること能わぬ。何より其の理を知りその意味する所を問わざるを得ぬ、ヒトという我らの存在と思惟。唯受け身でいる限りその耐え難い重圧に圧し潰されそうになる我らヒトに許された数少ない救いが芸術である。
     言うまでも無くつかこうへいの作品は舞台化することはできるが、成功させることは極めて難しい作品群である。つか存命中に残されたフィルム等を観ると、台詞は機関銃の弾のような勢いで発出され、全体に漲るテンションの高さとエネルギーの発する熱量は半端なものではないのだ。当時、リアルタイムでつか作品を観ていた観客たちが熱狂したのも頷ける。
     今回、清水さんの台本では、劇団員の加齢やCovid-19に対する政治の理科学的音痴というよりハッキリ無定見・無能が余すところなく失策に繋がり、矛盾だらけの政策に反映してパンデミックそのものの脅威をより増幅させ、人々を精神的・社会的に疲弊させたこともありつか作品の本質である被差別者の生きる状況そのものへの言及・表現と登場する4名個々の人物の持つ、被差別者が差別される自分を抱えながら人間として生きることを選んだ時のダンディズムが見事に対峙されることで作品に強い訴求力と深みを齎した。前半は、平凡な作りに見えるが、この陳腐に近いような定型表現が中・後半に際立って生きてくる。観客の生活者としての凡庸さに襲い掛かった、パンデミックと社会的不合理が負わせた深い不条理感に見事に呼応するような形を成したと言えよう。社会人劇団であるからこそ、解決不能な不条理に対する防波堤としての芸術の姿を描いてみせたと言えるのではないか。

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    2023/05/19 15:56

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