紙は人に染まらない 公演情報 藤一色「紙は人に染まらない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     べし観る、華5つ☆
     板上は必要最小限の舞台美術。劇場自前の板上に大きな平台を設えこの平台の上に畳を二畳分載せた方形の平台を二段重ねて部屋に見立ててある。観客席から見やすいように板中央奥に斜めにこの部屋部分はセットされており、卓袱台が真ん中に置かれている。下手側壁前には茶箱。部屋の上手には大きな平台の上に屏風を立て袖を拵え唯一の出捌けとして用いる。尚余ったスペースに背凭れの無い椅子が数脚。場転に応じて必要な個所に置かれるべく置かれている。他に玄関等を示すコの字の開口部に脚を付けた造作(これも必要に応じて位置を移動して使用)

    ネタバレBOX


     小国民世代を作り出し遂には太平洋戦争開戦から敗戦に至った帝国臣民の生き様を淡々と描く脚本は、客観性を観客に感じさせて素晴らしい。役者陣の演技は皆上手いが、さりげない演出も見事だ。同時に“三界に家なし”と蔑まれてきた女性とのジェンダーギャップが、主人公の母の立ち居振る舞いや一歩も二歩も引いた息子達への対応から見て取れる演技も素晴らしい。
     淡々と描かれている分、観客は大日本帝国時代の日本に対する正確な知識と日本社会に対する率直な視座も要求される作品である。例えば直接話に出てこないこの一家の父も戦死したと観て良かろう。太平洋戦争以前にもずっと日本は戦争をしていたのだから。他にも甲種合格で入隊して以降の態度も良く兵士としての評価も高い夫の妻が「夫の居ない今が最も幸せな女も居る」と事情を明かすシーン等もキチンとシナリオ化しDVの問題迄提起している点も高く評価したい。何故なら大日本帝国憲法で唯一の主権者であった天皇が、主権者としてではなく現人神として敬意を表される場面他、随所で疑似家族構造を以て専制主義国家体制を維持すると同時に現人神を父とし神の子として男子を、殊に長男男子を主として家父長制を構築、女子を下にみて一元管理しようとする構造が随所に描かれているからである。無論、以上のことを実際に機能させる為に特高が目を光らせており、人々は密告される恐怖や、実際に警察、特高等に見つかり嫌疑を掛けられることも恐れていた。「蟹工船」を書いた小林多喜二がどのように惨い殺され方をしたか。知らぬ者は居まい。(現在なら無数に居ようが)

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    2023/04/09 06:17

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