サイゴ 公演情報 Oi-SCALE「サイゴ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    現代の闇に切り込んだ問題作
    ネットを通じて集団自殺する人たちは、それぞれ事情はあるにせよ、どんな心境なのだろうと想像しようにも、自分にはまったく状況が浮かんでこない。この芝居は、それを演劇という形を借りて再現し、個々の心に問いかけてくる。
    現代を切り取った作品だが、作り物めいた虚しさがなく、台詞が自然で、説得力があった。パンフに時系列の説明図があったのも親切だ。舞台の間口が広く、ワゴン車も登場させられるほどで、照明を暗くし、舞台空間をよく生かした演出だと思ったが、もう少し狭い舞台のほうが集中でき、観やすい気はした。実質2時間30分と上演時間が長く、集中するだけに疲労感が残った。

    ネタバレBOX

    何度か登場する踏み切りの遮断機の装置が生きていて、人間だけで電車を表現したのにも感心した。
    俳優では、自殺した警察官の遺児、大木昇の川元文太、昇の同級生でフリーター・須藤勇気の村田光、性的虐待から妹を救うため父を殺した湯田の林灰二の3人に実在感があった。自殺サイトの管理人でリーダー的存在の吉井怜は透明感あふれる演技で悲しみが観る者の心に染みとおる。デニーロ気取りの運転手、浮浪者、不気味な医師、3役を演じ分けた宮崎敏行が面白い。
    普通、作・演出家は軽い役に回ることが多いが、林灰二は主要な役で出番も多いのだから感心する。
    自殺した父の後を継いで警察官になった昇の兄・大木肇の古山憲太郎は、弟に「うまいものを食いに行こう」と誘う場面が自然で良かった。こういうストイックで情味のある役を演じると出色の人。役者は普段の生活が演技に出るという見本のようだ。ブラボー・カンパニーの「大洗に星はふるなり」では慣れない喜劇で悪戦苦闘したようだが、彼は本来、今回のような役柄が合う俳優なのだ。林灰二が自らこの役にオファーを出したのもうなずける。
    不倫離婚スキャンダル以来、いまやすっかりTVから姿を消したお笑い芸人、長井秀和が肇の上司松尾を演じている。俳優に転向したいのだろうか。幕開きは口の中でモゴモゴつぶやいているので台詞が聞き取りにくかったが、後半はよくなっていた。なぜ、最初から声を出さないのか。芸人としても滑舌はよくなかった人で、いまにも得意ギャグで「集団自殺、まちがいない!」と言い出しそうだった(笑)。
    自殺動機があまりよくわからない登場人物もいたのが気になったが、1人1人、車の向こうに消えていく場面、湯田が昇に電話する場面は切なくてやりきれなくなった。
    死にたいだけなら1人で死ぬだろうが、ネットという仮想世界で知り合った通りすがりの他人同士であっても、同じ目的につかのまの繋がりを求めて死んでいく。言い知れない絶望と孤独の淵に立った人たちの姿が胸に突き刺さった。

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    2010/04/29 06:57

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  • tetorapackさま

    ありがとうございます。

    2010/05/07 20:44

    tetorapackです。

    きゃるさんのレビューに対する感想を、私のレビューに頂いた、きゃるさんのコメントへのご返事欄にて、合わせて書かせていただきました。ご笑読ください。

    2010/05/07 17:43

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