サイゴ 公演情報 Oi-SCALE「サイゴ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    超大絶賛!
    とにかく素晴らしいの一言。「Oi-SCALE 」という劇団を今の今まで知らなかったことを残念に思うくらい素晴らしかった。薄暗い照明、それぞれのキャラクターの特性を存分に生かした演出にセンスを感じ、またそれに応えるキャストらの演技も見事だった。セリフの所々にアメリカンジョークを飛ばしながら、ともすれば陰鬱になりがちな物語をそれらのセリフで巧みにカバーしていたと思う。惜しむらくはセリフが聞き辛い箇所があってそれだけが残念だった。セリフの声の大小は劇場のキャパに合わせてほしい。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語は大木昇を主軸に回す。昇は警察官の兄の世話で現在の仕事を手に入れた。だけれど何だか満たされない。まだ未熟な大人だった。トカゲのようにしっぽが生えたら何処ででもバランスをとって生きられるのに・・なんて考えていた。一方で交番で自分の頭を撃ち抜いて自殺した警官の父親のことが昇の頭から離れない。何故自殺したのか・・。
    またもう一方では最近別れた若い彼女のことを考える。自分から彼女と別れてしまった昇は付き合っている間中、「彼女に恥じかかせてちゃ悪いな」とか、「守らなきゃいけない」とか、考えるとその責任の重圧に耐えられなかったのだった。だから彼女と別れた後はなぜかホッとした。頼られる事が得意な人間もいると思うが昇はそうではなかった。

    場面は変わって自殺系サイトで集まった7人の内の一人、湯田は昇の同級生だった。彼は死ぬ間際に昇に電話をかける。昇の自殺した父親の事で昇に「羨ましい。俺もお前んちみたいに解るオヤジが欲しい。」と笑った湯田は昇との間に目に見えない深いしこりが残っていたのだった。父の自殺で苦悩する昇。家族関係で悩む湯田。彼らの歪みは得体の知れない大きな膿となって渦巻き、少しずつ心が壊れていったのだった。

    これらの物語を共通の友人・須藤を絡めながら、彼らの住む街の人々の情景、月の丘総合病院のドクターと看護婦、秩父警察署警察官らを絶妙に割りこませ舞台を動かしていく。中でも警察官・松尾のキャラクターの立ち上がりは秀逸でイタリア映画に登場するようなセンスの良さ!また、ドクター池田のイッチャッテルキャラもお見事で、この二つのキャラクターの存在で物語に味わい深いスパイスとちょっとした爆弾を落とす。

    こうして昇は湯田からの電話を受けたものの、どうすることもできなかった経緯を悔やみながらも相変わらず少しずつ大人の仲間入りをしていく。だから表情のないトカゲのお面をかぶった大人たちは世の中と上手にバランスを取りながらスーツを着て今日も仕事をするのだ。遮断機の向こうの大人たちと同じように・・。

    このスーツトカゲ人間はアニメで見たような気がする。タイトルは忘れたが・・。心が壊れそうになったとき脳が一時停止して心を守るというセリフにやたら感動した。「危ない!」というときに脳が作動する警報は実に素晴らしい働きだと思う。神秘的だとさえ思う。

    「みんなが自分の事を大切にしてちょっとずつ周りも大切にしたら世界は良くなるんじゃないかと思う。無理するなよ。」と昇を励ました兄は湯田の自殺を止めに入って誤って刺されたのかどうかは定かではない終わり方だったが、それらを全部ひっくるめて才能を感じる舞台だった。
    ああ、久しぶりに感動!

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    2010/04/23 17:17

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