実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
父が亡くなり、財産分与・遺品整理に集まった姉兄弟が繰り広げる罵倒合戦、その正面から衝突しマウントを取り合う様子が見どころ。そして登場しない人物、つまり亡くなった父の呪縛から いまだに逃れられない怖ろしさ、同時に滑稽とも思えるアイロニーが透けて観えてくる。この公演が面白いのは、父という見えない存在、父が遺したと思われる×××を連想させる資料、そして家の近くにある墓地、そこに眠る<無念>霊、その登場しない姿なきモノの 力<雰囲気>によって支配されているかのような言動や行動、それを圧倒的な迫力をもって描いている。
舞台美術が秀逸で、部屋の真ん中に父の肖像画<残像イメージ>が飾られ、冷徹に見つめているのか嘲笑しているのか、はたまた睥睨しているようにも思える。それは子供たちの凄まじい罵り合いの場面によって、見えざる力を発揮し楽しんでいるかのようだ。また音響だけでその存在を主張している蝉の鳴き声が印象的である。<13年>蝉の生態を通して人の生き様を準える様な、それはある一瞬で燃え尽きる。そこにあるのは論理や理屈ではなく、人の本能というか根源的な行為でもある。
罵り合いと独白を巧く織り交ぜ、会話劇としての厚みを持たせている。勿論、ちょっとした仕草で、その人物の精神状態や性癖を表現するなど、確かな演技力ー熱演で物語を支えている。登場する人物の性格や立場、今 置かれている状況は、それぞれが抱えた問題ー子供との関係や経済的なことを垣間見せることで説得力を持たせている。姉兄弟という家族ゆえに逃れられない悲哀、だからこそ理屈ではない感情を剥き出し 爆発させる。それをワンツーワークスらしいムーヴメントをもって効果的な観(魅)せ方をする。フライヤーの絵柄がその光景を見事に表している。
ラスト、暗 明転を繰り返し照明を諧調させることで時の経過と状況の変化を表す。その光景は、人々のこれからの関係性を暗示しているようにも思えるが、逆に父の存在、その象徴でもある屋敷<肖像画=残像>や周辺に彷徨う怨嗟の魂、その呪縛からの解放をも表しているようだ。その意味でラストシーンは印象的で余韻が残る。
(上演時間2時間40分 途中休憩10分)追記予定