満足度★★★★★
いっそポップな不安感
平坦な言葉と演技で、よくもまあこんな震度3が永遠に続いて時々割れた地面に足を落っことすような絶妙な不安感を煽れるものだと思う。いや煽るほどの激しさもなく、不安はそこら中に佇んでいるといった感じ。
いくらでもエグく観せることは可能な題材を、ぬるっと(しかもゆるい笑いさえ起こしながら)観せてしまう恐ろしさ。それがまたさらに足下をふらつかせながら、しかしどこか同じような感覚を日常の中で味わってきたような既視感をも抱かせる。
かわいいものをギューッて握り潰したくなるだとか、ああそうだよなーとうっすら同感できてしまう自分たちは、実は彼らのようにふつうに苛まれているのだろうし、けれどその事に気付かずそのまま生活していくのだろうし。
彼らは延長線上の抽象的な鋭角なんだろうな、とか思ったり思わなかったり。
普段作家が抱いているのだろう不信感や疑念を基とした関係性ネガティブ再構築といい、後半からいきなり増える光・音の謎演出といい、作家の精神構造というか精神状態がどんなもんなのか気になったので、アフタートークを聞けなかったのは残念。
好みが分かれるだろうが自分は好きな気持ち悪さ。