満足度★★★★
匣の中には喪黒福造?(笑)
東京湾に浮かぶ小さな島に建つホテルでの限られた客に対するサービスである少し開けると見たい夢を見ることができるが覗きこんではいけないという「逆パンドラ」のような匣をめぐる物語。
たとえば「新青年」に連載されていたような幻想文学(現代で言えば恩田陸や梶尾真治か?)風と言おうか、独特のシュールさがあり、そう言えば「カフカ的変身」(笑)もあったっけ。
さらに、変身ということではからくり人形に変身してしまった女性を、動きとS.E.でいかにもそれらしく見せる(カプセル兵団の『ゴースト シード』に近い表現)とか、「ここではないどこか、今ではないいつか」まんまな和洋折衷の衣裳とか、見せ方もなかなか。
そんな中に「なりたい自分とそれになってしまった自分」や「空と海が溶け合う水平線の青を表現したいと思い続けながら色彩感覚を無くし全てが灰色にしか見えなくなってしまった女性の哀しみ」など奥深いモノを織り込み、さらにストーリーテラー役も実は匣によって作り出されたものだったという「シックス・センス的逆転」まであって◎。
で、フト、匣の中には喪黒福造がいて、覗き込むと「ドーン!」をやられるのではないか?などども思う(笑)
いやしかし「ココロのスキマ」なんて用語も出てきたし、「自分の願望をほど良く満たすのはイイが度を越すとエラいことになる」というテーマは共通だし、あながち見当外れではないかも。(爆)