虫喰いだらけで、アナーキー。 公演情報 オッセルズ「虫喰いだらけで、アナーキー。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    エチュード的な面白さ
    平たく言えば、コントライブ。といっても、ちゃんと芝居仕立てにはなっている。劇団のエチュード的な要素もあって観ていて楽しめた。タイトルの意味がよくわからなかったが、観終わって納得。なるほど、うまいタイトルだ。
    作・演出の河野真子さんは役者としてしか観た事がないが、とてもインパクトのある女優さんだったことを憶えている。
    コントでも、漫才でも、日本の演芸作家はもともと、男性の世界。夫婦漫才でもネタはたいては夫のほうが考えている。最近は放送作家もコントを書くが、女性の放送作家の場合、ユーモアのセンスがある人でも、町山広美さんや山田美保子さんのようにバラエティー番組の構成作家になる人が多い。
    だから、女性の作ったお笑いネタは、女性の漫才やコントでしか観られないのが現状。そのなかで河野さんは異色と言えるかも知れない。オッセルズの過去の公演のDVDを観てみると、女性特有の・・・という印象はなく、両性具有のような人とお見受けした。友近のやっているような女性らしいチマチマしたお笑いネタではなく、リアルで思い切りが良いカラッとした男性的なネタで、思い出し笑いができるほど面白い。別の機会に本公演をぜひ観に行きたい。
    公演のあとに希望者のみの宴会参加というケースは知っているが、最初から歓談タイムが組み込まれている公演は初めて。自然と、来る客は演劇関係者や友人、知人が多くなるが、自分のような部外者でも話を聴けるのでこういう企画も悪くない。
    バーなので喫煙OKはいたしかたないが、地下で空調が悪く、気管支の弱い当方には少々辛かった。せめて、テーブルを喫煙・非喫煙席に分けてもらえると有難かった。案内された席がたまたま喫煙者ばかり固まっていたのだが、あとで見回すと、たまたまなのか、まったく吸っていない客ばかりのテーブルもあったので分煙は可能だったのでは。

    ネタバレBOX

    ビルの地下への階段を降り、店に入って入場料を払うと、出演者がバーの従業員のごとくドリンクの注文を取りに来る。
    どんな感じで芝居を始めるのかなと思っていると、出演者3人がバーのオーナーと従業員という設定で会話を始めた。つまり、このバー自体がすでに「舞台」になっていたわけだ。
    バーは不景気のためか最近客が少なく、オーナーの女(川崎桜)は、毎晩、店に顔を出して飲みに来ているらしい。いまは2月という設定で、「ニッパチって何のこと?」と世間話を始める。
    オーナーは従業員の男2人(小笠原佳秀、武子太郎)に、「何か面白いことやって、私をもてなしてよ」と注文する。最初は「エアートランプ」などやるが、オーナーのわがままなゲーム展開にシラケてしまう。
    オーナーが高校の演劇部にいたという話から「即興芝居」を始めることになる。ここでもオーナーが芯になる。
    男女3人組で宝籤売り場を襲って宝籤を奪おうということになり、3人はいろんな役を演じていく。耳の遠い女店員の対応に戸惑ったり、「バラと連番の割合」に迷ったり、バッグを狭い窓口にどうやって入れるか苦慮したり、警察に取り囲まれ、犯人の母親役の小笠原の説得の秋田弁が聞き取れなかったりする。捕まって取調べが始まると、「かつ丼をとってやるのはなし」と取調べ官役の武子に言われたことに犯人役の小笠原が拗ねて芝居が中断する。男2人は服役し、事件から3年。事件の見張り役だった女だけが逃げおおせ、宝籤でも当てたのか、店を持ってママになっているという噂に訪ねて行き、女を詰問すると、女は当時、小笠原の子を身ごもっており、捕り物の最中に陣痛が始まって病院に運ばれたため、2人を逃がせなかったことを打ち明ける。「子供」と聞いて、2人の視線から、自分が子供役を演じなければならないと察するときの武子の表情がなんともおかしい。子供がいたという事実によって、3人が感きわまった芝居をし、本気で号泣する。せっかく入ってきた客(河野真子)が3人の様子を見て、引いてしまい、客を逃すというところで芝居は終わる。
    ただ、私がひっかかったのは、当時、臨月ならば、男たちが気づかないのはおかしいという点だ。よって、女に子供がいたということを出所して知るのはありえない。また、宝籤の場合、番号があるので、どの店にどの番号が割り当てられたか、警察が調べれば把握できるのではないだろうか。当選しても、換金にくれば逮捕できるのではないか。細かいようでもそういう不自然な設定のコントはいただけない。そういうことをクリアして終わっても良かった。つまり、女が臨月ではなかった設定にするか、臨月であるにしても、客が帰ったあと、臨月だったのはおかしいと男がつっこむとか。宝籤番号の件は、盗んだ宝籤以外の宝籤を買っていて、そちらが当たったことにするとか。
    終演後、河野に矛盾点をただすと「そうですよね。口からでまかせを言ってるお芝居なもんで」と笑っていた。「虫食いだらけで、アナーキー」。なるほど、タイトルはそうなのだ。そういう矛盾も即興のお遊びのひとつと解釈すべきなのか。だが、私は芝居の辻褄にこだわるほうなので、気になってしまった。
    川崎は大人の女の色気があって、芝居が達者だ。私事で余談になるが、川崎は私の高校の同級生で演劇部の部長をやっていた子に容姿、雰囲気も話し方もそっくりなのだ。うちの母校は演劇部だけでなく、クラス別、学年別、全校と、一年中、いろんな座組で演劇をやっていた学校だったため、彼女と古典の芝居で組んだことはあったものの、ほかのチームの芝居への自分の出演と重なってしまい、演劇部での彼女の現代劇芝居は一度しか観られなかった。当時、彼女の芝居を観た劇団四季の浅利慶太が幹部と共に女優になるよう口説いたほどの逸材だったが、彼女は「平凡に生きたい」と芸能界には進まなかった。が、彼女が指導した後輩で、いま劇作家になって大劇場で活躍している人もいる。私も彼女の勧めで古典芸能を勉強することができた。
    川崎の芝居を観ていると、彼女の演技を髣髴とさせ、とても懐かしい気持ちになった。今後も観たい女優さんだ。
    武子は存在感があって、芝居の流れをしっかり作っていく。小笠原はナチュラルだが印象に残る芝居をする人で、わざとらしくない演技で笑わせることができる人。
    この3人のキャスティングが心憎い。


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    2010/01/28 16:29

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  • セルズ族さま

    返信いただき、ありがとうございます。
    タバコの件は覚悟の上で行ったんですが、やはり敏感なのか咳込んでしまいました。
    昔と違い、最近は吸わない人も多いので、何らかの方法で配慮していただければ有難いです。
    河野さんの笑いのセンスは貴重です。これからも楽しませていただきたいです。自分の好きな俳優さんたちがオッセルズにどんどん客演してくれると嬉しいですねぇ。

    2010/01/29 21:24

    きゃるさんご来場ありがとうございました。
    喫煙の件は改善しなければならないですね。テーブルごとの分煙や、喫煙DAYと禁煙DAYを設けるなどなど。嫌な思いをさせてしまって本当に申し訳なかったです。貴重なご意見ありがとうございました。

    毎回タイトルは全体の印象ををザックリ捉えるようなコンセプトと、プラス単純に音の感じで付けています。なるほどと言っていただけたのは嬉しいです。

    DVDも観て頂いてありがとうございます。なんというか、あのようなくだらなーいことを真剣にやっております。是非次回、劇場で観て頂けると嬉しいです。

    素敵なコメントをたくさんありがとうございました。きゃるさんと出会えて本当に良かった!







    2010/01/28 19:57

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