狼少年タチバナ 公演情報 劇団牧羊犬「狼少年タチバナ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     華5つ☆ ベシミル!! 少し特異な視座から描かれた人間。脚本、演出、舞台美術、役者陣の演技、照明や音響効果、何れもグー。而も深く考えさせる。

    ネタバレBOX

     極めて特徴的な舞台美術だ。ぼんやり眺めていたのでは余りこの特殊性に気付かないかも知れぬ。然し蛇腹を意図的に而も巧妙に変型させたかと思えるようなこの構造を心理構造に当て嵌めて考えるなら、一見安定し正常に見える人が、実は内面に大きな歪みを抱え心も魂の安定も欠いて、その結果肉体的にも正常な機能を果たさぬ部分を抱え込んでいるような塩梅を暗示しているように見える。そのことに観客が気付くようにとの意図からか、開演前殆どの舞台で舞台美術が見えないように板上は暗くしてあるのが一般だが、今作では初めから明転している。
     中盤まで登場人物各々の関係が消化不良でも起こしたようにイマイチ判然としない。確定できる要素が、つまり決定打がずっと伏せられているのだ。無論、その分観客も心の内に何とも居心地の悪い不安定感を抱え恰も深い霧の中を彷徨い歩くような緊張感と不安と不確実性に苛まれて心がざわつきつつ、舞台に釘付けになる。総てがハッキリするのは終盤に至ってからだが、この辺り話の持っていきようが実に上手い。
     無論、注目すべき点は上に挙げたことだけでは無い。登場人物の多くが養護施設出身者という設定であり、登場するワインバー店主の連れ合いは台詞から判断する限り女子刑務所に居たことがある等だ。色々な意味でヒトという生き物が持つ、プラス方向の可能性、マイナス方向の可能性の大きさ、怖ろしさすら考えさせる奥の深い極めて優れた作品である。時代設定は2015年。今作初演時を踏襲している。



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    2022/10/29 17:33

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