肖像の残滓 公演情報 劇団パラノワール(旧Voyantroupe)「肖像の残滓」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    川添美和の熱演に鳥肌が立った!
    愛した人に先立たれて、残った男が自分の心に巣食う闇と戦い、悲しみを誤魔化しながら快楽に逃げた生き様を描く。そしてそんな彼らに関わる伊藤羽美。

    それぞれの思いを交差させながらも「生きる」について真摯に描いた作品だったと思う。

    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX

    カサゴはイワナという婚約者を失ってからというもの、その悲しみから逃れるように僻地に快楽主義論者を集めて「エピクロスの園」を開設する。その一方でカサゴの弟・ユキマスは「過剰性的表現防止法案」を条例化する。

    この二人はイワナという女性を愛していたのだったが、イワナが選んだのは兄のカサゴだった。イワナは猥褻な画家を兄に持ち、兄の希望通りに猥褻な画のモデルになっていたが、兄はあまりの品行の悪さに告発されて投獄されてしまう。そんな折、イワナも迫害を受けて自殺してしまう。しかし、イワナは最後まで兄と兄の描く絵に敬意をはらっていたのだった。

    そんなイワナを失ってからカサゴはイワナの為に園を立ち上げたが、弟・ユキマスはイワナの為に今後そのような悲劇を生まないようにとの思いで、条例を施行したのだった。兄弟の思いは同じでも、立ち上げる方向性が違ったのだ。

    そんな環境の中、ユキマスは兄の為にカウンセラーの伊藤を依頼する。しかし、伊藤は株式会社自殺本舗の社員でその職は、依頼主の希望に沿った死に方に協力して死なせることを生業にしていた。

    伊藤は園に居住する狂気に満ちた快楽主義者と兄弟の間に入って絶妙に活躍する。その行為は決して死なせ屋ではなく、生かせて彼らの生き様そのものを見届けようとしているかのような慈善事業だったのだ。

    残った者は死んだ者の分まで生きて死者のの誇りを守る事が死者に対しての敬意なのだ。

    風俗嬢をしながら弟の生活を守ったウイカも、そんな姉の風評「お前の姉さんは便器みたいな女なんだぜ。」と言って見知らぬ男に殴られた弟・アカザの傷ついた心も、愛おしいのだった。最後に二人の結ばれた手はやはり感動だった。



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    2009/11/12 17:22

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