伯爵のおるすばん 公演情報 Mrs.fictions「伯爵のおるすばん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     切ないね、死ねないということは!

    ネタバレBOX

     板上には、極めて手の込んだ舞台美術。全体としてフランスの建築物に特徴的なシンメトリックな構造であるが、ホリゾントの壁中央には中央のやや低い位置に丸窓、その左右に方形の窓が穿たれこの真下辺りは、サロンと寝室(第一場ではブルボン伯爵夫人の屋敷だが、場転に応じてベッド上の掛物、サロンの小道具類は適宜変わる)驚くべきことにこの部分は回り舞台になっており、実に効果的に用いられる。この回り舞台の下手・上手はシンメトリーになっているが、こちらの造作も大しもので、下手側だけ説明しておこう。(シンメトリーだから上手側は簡単に想像できよう)2F部分(フランスの伝統的表現では1階に当たる)は回り舞台の側から見て隣に小さな踊り場を囲む木製の柵、その背後にホリゾントとの間を若干開けて、方形と半楕円形の穴を穿った壁、半楕円形のアーチを持った壁は斜め手前に延び、1F(地上)へ続く階段に繋がっている。この階段も途中で右斜めに曲がるという構造でセンスの良さを見せる。無論、木製の品の良い手摺も付随している。
     この屋敷には、伯爵夫人と右足、左足の履物担当の各男性奴隷、小間使いの女性奴隷1人が住んでいるが、既存の奴隷たちはずる賢かったり、様々なことを教えてもインセンティブが低い為、婦人は無垢な魂を持った奴隷を求めていた。夫人にとって最も大切なもの・こととは、社会的地位や富、名誉ではなく純で気高い魂であったからである。掛かるが故に彼女は既存奴隷達に教育を施したのであったが、前述の如く、一向に効果が無かった。連れて来られたのは橋の下に既に30年程も暮らしているという噂の橋の主と仇名される若者であった。無口でピュアだとのことであった。夫人は、この若者の面倒をみることにしたが中々言葉を発することがなかった。彼女は童話を使って読み書きを教え、ある時若者は口を利いた。若者は伯爵夫人に篤い好意を抱き、彼女を好きになったが、彼女には普段離れていても夫があり、近年は体を壊して妻の城に戻りこちらに住むことになったので、それまでの使用人は総て所払いとなった。またこの時代フランス革命後の粛清により、王族・貴族はギロチンの憂き目に遭う者も多かった。結局、夫はギロチンの露と消えたが、婦人に拾われた若者には、それ迄の記憶は無く、唯、伯爵家に引き取られ、貴族の衣装を与えられて生活し、而も中々品のある顔立ちであったこともあり、奴隷仲間とパリに出てからは彼らの目論見に従って荒稼ぎをした時期もあった。が、彼が不老不死であることを知った伯爵夫人が死ねないことの不幸を哀れんだように、彼は現在は膨張過程に在る我らの宇宙が収縮過程に入り遂にはビッグバン以前のエネルギー集合体になる迄収縮する時点迄生きた。この間流れた時は約56億年、愛した相手は体の弱かったそして、心の底から彼を愛してくれ、彼も心底彼女に惚れたが、逢えない3年の後、病に連れ去られ、迎えに行ってやることもできなかったひよこへの慚愧の念を抱えながら、何時しか長い時を経て、傷が和らいで少しはヒトらしく生き、恋をしたのであった。彼女との約束「他の人を好きにならないで」との願いを守って次に愛した者から「男だったらいいってことではないんじゃない」と指摘された件を含めて内心忸怩たる念を抱えながら結局5人を愛し、宇宙人とも恋を交わして独り彼のみが永生を享受する身であった為、その幸福は短く、悔恨と苦悩ばかりが永い生涯を終える直前、人類のみならず、地球に生まれ嘗て存在した生き物総てと共に、共に暮らした宇宙人達が集まり、互いに出会って行うさよならパーティーの司会者としてこの宴を仕切る大役を担う。無論、彼の愛した総ての人々もこの時蘇り、再会を祝して乾杯! 花火が弾ける中。間もなく宇宙が終わる。

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    2022/08/25 15:07

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