畳屋のあけび 公演情報 CROWNS「畳屋のあけび」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     敗戦後12~14年後辺り迄を描いた今作。敗戦直後を描いた作品は数多いが、この時代を描いた作品はかなり少ないのではないかと思う。物語は朝鮮戦争特需で日本経済が持ち直した後、公害が騒がれ始めた1957年頃から1960年1月19日の安保条約改定直前迄の世相を若い新進作家夫婦を中心に様々な世代の生き方、考え方、各々の生活様態をゆるぎない筆致で脚本化した。厚みのある作品である。(追記7.19)華5つ☆

    ネタバレBOX

     新進作家自体が面白い。某著名作家・菅原のゴーストライターをやっている。というのもこの作家・多々良聡一が住む家は不思議な家で亡くなった先代が徳のある人で自分の子と戦災孤児たちを兄弟姉妹同様に育てた関係で先代亡き後も長女が大家となって血の繋がらない妹たちも2階に住まわせるなどして何くれとなく面倒を観て居たのである。多々良も一種の居候であった。その多々良の書斎に2階に住む秋子の経営する店で働く小春が酔って押し掛けてきた。水商売をやっているとはいえ、純でひたむきな所のある小春に多々良は惹かれてゆき、遂に結婚するに至る。この間、多くの戦友を意味も無い戦争でむざむざ殺され生き残った漢気の強い元伍長は、安保改定に反対であり、元部下と共に叛旗を翻そうと動いているようでもあった。
     一方、大家の実妹は、戦後一時吉原に身を沈めていた。恋人がピカの後遺症を気にして失踪してしまったのが原因だった。偶々自分の元の家の近所を通った彼女を見掛けたとの知らせもあり、住人挙って妹を探し見つけ出すことができた。「自分は汚れてしまった。もう戻れない」と嘆く妹に姉は、「あんたは、生き抜いたんだ」と励ましそれが最も尊いことだと諭す。この優しさが素晴らしい。これらのサブストリームが時代の暗部をキチンと照らし出し作品を重層化すると同時に多々良の広島の厳しい叔母が小春の人定に上京するという。多々良の部屋は何時でも誰かが屯するような部屋であったが、皆オメデタの為に、遠慮すべき所は遠慮し手助けすべき所は助けて、何より小春自身の気立ての良さ、裏表の無さ等をキチンと評価した叔母は2人の結婚を許した。然し、多々良が粗筋を書き菅原が完成させた小説が大きな賞を獲った。多々良自身の実力が証明されこれから愈々新進作家として活躍、という段になって多々良の若年性認知症が発症した。若い分、進行が早く多々良は、小春の名さえ思い浮かばなくなることがあった。そんな中、彼は最後の小説を仕上げに掛かる。原稿と向き合っている時ばかりは、認知症の症状が不思議と出ない。小春は傍らにいつも寄り添い、夫の傍らでなにくれとなく世話をし、話相手になっている。小説に描かれた畳屋の所帯の前には、この住いと同じあけびの木がある。

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    2022/07/08 03:04

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  • 皆々さま
     ハンダラです。大変遅くなりましたが追記しておきました。
    ご笑覧下さい。
                              机下

    2022/07/19 20:20

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