もんくちゃん世界を救う 公演情報 U-33project「もんくちゃん世界を救う」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     お伽噺「桃太郎」をベースにした作品だが、この噺をどう解釈するかが最初の関門であるのは自明だ。現代の思考傾向に照らせば鬼ヶ島の鬼たちとは、即ちかつて現為政者に連なるような勢力或はイデオロギーに敗れた勢力であり、負けたが故に被差別者として機能させられてきた人々の集団であると捉えられる。鬼即ち邪悪・凶悪であり、勧善懲悪説の悪者である。従って退治されるのは当然である。何故ならその者達は悪に過ぎないからである、と斯様な意識の下どんなに酷い仕打ちを「正義」から受けようが「正義」が批判の対象となることは無い。
     上述のような立場から今作を観る者にとって今作は極めて哲学的な作品であると言わねばならない。その哲学が結果的に至り着いている地点は、少なくともサルトルが至り着いた主要な地平の内、最も大切な地平のレベルの1つである。(追記6.27 )華5つ☆

    ネタバレBOX

     板上の舞台美術は奥に高い段そのセンターから迫り出す突堤のような低い段。高い段の奥の中央に出捌け用のスペースをとって書き割が立てられている。下手の書き割には樹木や太陽が。またホリゾント、側壁にも樹木が描かれ自然を象徴している。上手の書き割にはビルディングに雲が。下手とシンメトリックにホリゾント及び側壁に人工を象徴するビルディング。書き割の手前には大き目の箱馬が1つずつ置かれ色はそれぞれ青と赤。オープニング場面では巨大な桃が突堤の根元真ん中辺りにデンと置かれている。
    ちょっと変わっているのがストーリーテラーとして1人女優が登場することであるがこの演出はお伽噺の新解釈を提示する仕掛けとして作家が問題提起する姿勢を示しているようでもある。
     さて今作では桃太郎に登場するキャラを3つの属性で示したが、誤解や誤認を避ける為各々の属性に従ってグループ分けしておこう。桃太郎≑もんくちゃん=A、鬼(自己主張できない者達を差別し隷属化して得意になっている者達)≑赤鬼・青鬼=B、犬・猿・雉≑犬井・猿渡・雉谷(優しさや引っ込み思案、自身喪失によって自己主張できない者達)=Cとする。
     登場はしないが筆者が想定する為政者(地域内)=D,地域外=E。まず物語の具体的問題提起の主体となる鬼・Bの属性とされる凶暴性や力を背景にCはBに支配され鬱憤を募らせている。おじいさんは、リクルートしたもんくちゃんを旗印として負のエネルギーを集め変容を目指している模様である。文句を言うという一歩踏み込んだ行為を異見・意見を謂うという発想に切り替えた時、C達の反逆は成果を見せた。然し乍ら自らの主体を賭けて真に為すべきことを自分の頭で考えた訳でもなければ、自らその思考の奥の奥迄探索し究極の答えに辿り着いてそのような変革に携わった訳ではないCグループは、必然的に己の位置をも、また社会という人間存在の根底的基底にも触れることなく一種の暴発をしたに過ぎなかった。結果的にその批判は行き過ぎ、瓦解する。当然、Bらはフェイクや情報操作という手法を用い新たな攻撃を仕掛けてこよう。そしてC達己自身では思考というレベル迄到達することが出来なかった者たちは再び元のもんくのカオスに逆戻りするであろう。この経緯を観察していたAは、己の頭を用いて考えることを悉り遂にC達自身をも救い得る唯一の道を見付けることに成功した。その道とは、各々が自ら負った条件の下、その苦境の中で自らの行動、思考、状況や諸関係の検証を為し、その内面に還って自らの自由や生死の問題にも直面。この試行錯誤を経て遂に自由の本質と己の根源的欲求に気付き、自ら自身の選択によってしか成否は決定できないということの意味する所を悉る。このことによってしか、責任を負うことも恥じぬ行いとして自らを生きることも出来ないという人間存在の原義を実践し得る。それがタイトルに込められた世界を救うことの意味だ。
     些末的なことを謂えば、Bたちも所詮雇われている弱者であるに過ぎず、恰も自分達の意志や知力でC達に憂き目を見せていると勘違いしているB達を差配しているD達が存在するのが現実であり、そのDを従えている力Eが存在している。丁度我らの味わっている日々の状況そのもののように。だが、今作の提起したAの結論はDにもEにも対抗し得る力なのである。
     もんくちゃん役のゆでちぃ子さんが何とも言えないキュートな魅力を発揮しているのは、こういった真の強さを秘めているキャラからであるように思う。

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    2022/06/25 03:07

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  • みなさま
    ハンダラです。バタバタしていて遅くなり申し訳ありません。
    追記完了しました。よろしければご笑覧下さい。
                             机下

    2022/06/27 17:31

    みなさま
     追記はのちほどします。お待ち下さい。
                ハンダラ 拝

    2022/06/25 03:10

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