第15回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2022(IDTF) 公演情報 シアターX(カイ)「第15回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2022(IDTF)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    IDTF2022 6.21公演
     The 15th TheaterX International Dance + Theater Festivalの6.21公演は3組のダンスパフォーマンスが行われた。何れも個性的な作品であり、音と身体のコラボレーションとして見事である。(追記後送)

    ネタバレBOX

     最初に登場したのは意味を構成する前の音を用い実に深く多様な音声表現を行う赤い日ル女さんとアメリカ、セネガル等で多様なダンスを学び古武術、アートマイムを続けるパフォーマーの西尾樹里さん。タイトルは『    』ハクと読む。意味的には無題に近いが、ここに表現されたものは、当に意味が成立する前の言葉の芽・カオスと身体との類稀なるコラボレーションであった。赤い日ル女さんの発声はタイのカレン族、或はイヌイット、アイヌ等の発声法、古歌を聴くうちに彼らと様々な地域の発声法の類似性や言語以前のカオティックな表現にカオスの持つ深い豊かさ、深さ、未分化故の可能性に魅せられた為。そしてそのような表現を自ら追及する旅が始まった。独自の表現法は現在も模索・開拓し進行中である。10年程前迄はパーカッション奏者であったが、何か道具を用いなければ音楽表現にならないかのような状態に疑問を感じ、現在の表現法を編み出すこととなった。実際にこの方法で表現する者として聞いて下さる方々の前で演者となったのは6~7年前からだ。評者は、実際に彼女の表現を聴いて余りにインパクトが大きくこれほど多様な音声をヒトが作り出せることに驚嘆した! 小柄な方であるが、このような音声を発する為に例えば口を殆ど閉じて喉の奥を用いて発声したり、呼気、吸気と口の開き方や吐く或は吸う時の強度を変化させての発声などで獣の唸りのような音、風の強さや気象変化に応じて異なる風の音に似た音、その他の部位を用いて野に生きる様々な生き物たちの発する命の音、せせらぎや木霊等々を、時折入る静けさで際立たせながら深山幽谷さえ想起される音声は、言語化されない表現としてのダンスパフォーマンスと見事に呼応して演じられる、お二方ががっちり組み合い、交感する圧倒的パフォーマンスであった。
     次に登場したのはコンテンポラリーダンサーの浅野里江さん。メインテーマとして掲げられているのが21世紀renaissanceという所からヒントを得て、その史的意味(所謂西洋の中世にはキリスト教が極大化した結果、聖書に書かれていないことは真では無いとされ科学的知等は異端審問の憂き目に遭い殆ど根絶やしにされていた。ガリレオが弾圧されたのはこの所為である。ところがギリシャで隆成を誇りローマに引き継がれたこれらの知性は往時の交易・交流を通してアラビア語に翻訳されアラブ世界で更に発展していた。ヨーロッパの暗黒時代と謂われる中世、世界で最も発達した文明・文化を誇ったのはアラブ世界であった。その名残はヨーロッパの王侯がアラブ世界に憧れるゴシック・ロマン小説の表現にも如実に描かれている。ところで十字軍やそれに対抗する形で行われたアラブサイドからの反撃等との間にも相互理解を求める領主たちが居た。このような再交流の中でアラブ世界で更に発展したギリシャ・ローマ的文明はアラビア語からラテン語に翻訳されヨーロッパに入り込む結果を生みそれがヨーロッパに再び科学的知を含む文明・文化の再興を齎した。この歴史的事実をrenaissanceという)とは別の解釈をした。タイトルは「ありとあらゆる」。表現は日本神話の八百万の神と謂われるものは、神の転生の姿であるとの解釈が民俗学的な見解に在るそうで、その転生する神が現在も在るのであれば、その神は我らのITや科学技術の世の中にも何ら本質を変えることなく存在し続けているハズだ、との立場から紡がれている。従って音響はギターの爪弾きにバイクの擦過音や発進音が組み合わされた形になった。自分の立場は、可成り史実を重んじる立場なのでこの理論には異見があるが、それはそれとして独自の発想の下に創られた作品として評価したい。
     トリを務めたのはERIKO・HIMIKOさん。タイトルは「儒の花—answer—」である。着想は酒見 賢一の小説『陋巷に在り』から得ているという。春秋時代孔子の弟子であった顔回を主人公とした小説だ。

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    2022/06/23 02:41

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