第15回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2022(IDTF) 公演情報 シアターX(カイ)「第15回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2022(IDTF)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    踊る妖精 作舞・ソロ『鶴の恩返し』2022.6.16 19時 シアターX
     両国の劇場・シアターX創立30周年記念・第15回シアターX国際舞台芸術祭ビエンナーレ2022は、メインテーマを21世紀Renaissance(現実を剥ぐ 生きものの詩)と題した。因みに各回、たった千円である。予約はしておいた方が良い。キャンセル待ちになる可能性もあるかも知れないから。

    ネタバレBOX


     初日は標記タイトルの通り。5名のダンサーに和楽器奏者、ピアノ伴奏者が各1名。共通コンセプトは民潭・『鶴の恩返し』である。以下出演順に。
     韓国から現在韓国国立現代舞踊団芸術監督を務める南 貞鎬さん。韓国にも似た民潭があるそうであるが、鶴を助けたのは老夫婦で鶴が嫁入りするという話ではないとのことであった。ダンスは日本の民潭も勘案して創作なさった模様で犠牲を中心テーマとして創作している為、キリストのpassion即ちredemptionにも連なる少し抽象的な表現になっていた。
     今回はダンス公演が殆どなので当パンを見ておいた方が良かろう。自分はいつも通り当パンを一切見ずに鑑賞に及んだのだが、各ダンサーが共通テーマから己独自の要素を掴み出しそれを表現するという形式を採った為、2番目に演じた竹屋 啓子さんがコンセプトを開始早々述べ、ダンスも鶴の形態模写も入って極めて言語的であった為木下順二の「夕鶴」を思い返しながら拝見し得た以外は、実際何をダンスで具象化しようとしているのか拝見中は五里霧中状態であった。演目やダンサー、そして個々のプロデュースコンセプトにも因るが今回ばかりは当パンは読んでおいた方が良かろう。改めて身体表現と言語の加わった身体表現の質的差異を如実に感じる勉強になった。
     続いて登場なさったのは花柳 面さん、和楽器演奏・囃子は福原 百之介さん。和楽器はメロディー楽器としてもパーカッションとしても用いられるが拍子の刻み方が鬼気迫るような緊張感を齎し実に見事な演奏であった。と同時に鉄琴に似たオルゴールという打楽器の音も涼やかでどこか儚い音で客を引きずり込む。花柳さんは鶴の織った見事な反物に焦点を当てて創作なさっていた。
     次に登場なさったのは上杉 満代さん。小さな傘を頭上に翳しての登場である。衣装は女性がドレスを着る前の状態とでも言ったら良いだろうか。当然、鶴が納戸に籠って機を織る姿をイメージしていよう。西洋とのコラボも多い方だからこれは彼女流の自然な発想と思われる。用いた傘は半折れが効くタイプで華奢な構造だが、オシャレなものであり、この華奢性が鶴の細い脚を連想させ、強靭な精神とは反対に脆弱な身体を感じさせて哀れである。
     トリを飾ったのがケイタケイさん。ご自分で衣装を縫い衣装のあちこちに設けたポケットに水や松の葉をたくさん入れ機を織る度にその羽を自ら抜いて機に織り込む、余りに切ない鶴の念を表現した、水が流れるのは一度だけだが、鶴が血を流しながら機を織ることを象徴していよう。その余りの辛さ切なさから血が透明になっているのである。布地の基本は白、ポケットの開口部に黒を用い、赤い糸を引き抜くことで羽に擬した松葉が零れ落ちるという仕組み。モダンダンスの動きに合わせながらこういった点にも工夫を凝らす表現であった。ケイタケイさんの演技にはピアノの伴奏がついたが演者は松本 俊明さん。現代音楽風ではあるが余り不協和音等は用いずダンスとのコラボを意識した良い演奏であった。

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    2022/06/18 04:36

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