小刻みに戸惑う神様 公演情報 SPIRAL MOON「小刻みに戸惑う神様」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     脚本はジャブジャブサーキットのはせ ひろいち氏、演出が水先アンナを演じた秋葉 舞滝子さんである。舞台美術の精密、センスの良さ、合理性、使い方何れをとっても流石スパイラル ムーンの舞台と唸らせる内容。無論、脚本、演出、演技もグー。殊に秋葉さんの演出、演技の群を抜いた上手さは格別である。(華5つ☆、タイゼツベシミル!!)1回目追記 6.16 17時 2回目最終追記6.18 0:50

    ネタバレBOX

     上演時間約105分。板上は中央の焦げ茶壁面に掛け時計この壁はホリゾントとしても機能し舞台上手から下手の端迄を占めている。上手・下手にそれぞれホリゾントと平行するよに延びた短い壁。短い壁とホリゾントの隙間が各々出捌け。下手の短い壁に直交するように左手側面の壁、上手も同様に直交する側面壁。上手側面壁の客席側に2階へ通じる階段が設えてありここが3カ所目の出捌けである。壁面には額装された写真などが掛かっている。上手にはソファーセットやテーブル、サイドテーブルが置かれテーブル上には黒盆に載せられた湯呑と未だテーブル上に置かれたままの湯呑が混在している、下手のテーブル上にも同様に湯呑と黒盆、椅子。上手下手各々のスペースの入口辺りに鉢植えの植物が置かれているので感覚の鋭い人には、それとなくこの舞台美術が葬儀の雰囲気を醸し出しているのがこの時点で分かるが、黒盆が2カ所に用いられ而も湯のみの数やその配置で上記の推論が正しいことは直ぐ合点がゆく。舞台美術のセンスの良さは上手側壁から左斜め方向に延びた明り取りの窓の鋭角の鋭さとその鋭さを宥めるようなその色彩・文様の微妙繊細なマッチングにある。上手サイドテーブルの傍にとても小さなゴミ箱が置かれているのだが、これもキチンと使用する辺りの気配りも流石である。
     脚本は周到に練られており随所に仕掛けられた伏線・回収、遊びが在る。役者陣の演技については先に述べた通り、皆そつの無い演技力を見せてくれるが秋葉さんの図抜けた演技力はスタニスラフスキーの談じたレベルのそれを越えているように思う。それは単に自然に滲み出るというレベルであるより間の取り方、台詞回し、過不足の無い表現による安定し自然な立ち居振る舞いから醸し出される存在感が舞台全体を締める。こんなことができるのは矢張り脚本の深い理解と、登場人物相互間に働く人情の機微への没入、翻って瞬間的に他の出演者が演じている役柄との相互関係を的確且つ俯瞰的に判断、身体表現に移す瞬発力と舞台空間内での位置関係のこれまた極めて的確な把握によった言語(台詞)発語のレベル、時間(間)、空間(他の役者や美術との舞台内位置関係レベルと身体レベル相互の陥入及び俯瞰との瞬間的な交感能力があってのことだろう。まだるっこしい言い方になった。もっと根本的には彼女が日常レベルに於いてもアイデンティファイし得ているということなのであろう。
     そんな彼女が役名・水先アンナとして活躍する。即ち葬儀一般に関わるフリーの水先案内役を務める人物を造詣している訳だ。それは慣れない葬儀の為心細い喪主や親族と霊界を繋ぐ或る意味カロンであり、世間一般の習わしと儀式・霊界との仲介役でもある。
     同時に脚本で亡くなったのが劇作家という設定もあり、亡くなった劇作家の主張が若くして最愛の妻を喪い作風が変じたこと。以降総ての作品に単に悲嘆に暮れる残された者を描くことのみならず、様々なエピソード、時に明るい話題も綯い交ぜにしつつ而も常に死の影が存在したこと、と作品創造との不可分な諸関係及び類似性が対比されつつ物語が紡がれてゆく。
     この優れた脚本活き活きした舞台作品に仕立て上げているものは役者陣の演技、照明、音響の諸効果を見事に構成し効果的表現に高めている演出。そして数々の深い台詞、その深い科白の数々は人々の日常と葬儀との入れ子細工を通して神学と科学を示唆し、遂には誰しもがその問いを発し、応えきれずして何時しか放棄してしまった問題、‟我々は何処から来て何処へ行くのか? 我ら人間とは何か?“ という普遍的な問いを、再度提起してくるのだ。


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    2022/06/16 04:20

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  • みなさま
     ハンダラです。最終追記しておきました。
    ご笑覧下さい。

    2022/06/18 00:51

    みなさま
     ハンダラです。第1回目の追記しました。2回目の追記は今夜遅くか明日中にはします。
    用件のみにて失礼します。
                                      

    2022/06/16 16:57

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