透き間 公演情報 サファリ・P「透き間」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    演劇という芸術を通じて、作者および観客が(物理的・心理的に)距離のあるテーマといかに関係性を結べるかという実験を行った意欲作である。

    ネタバレBOX

     アルバニアのイスマイル・カダレ『砕かれた四月』を下敷きに、復讐が社会的制度として存在する世界をいかに理解し得るか(あるいはし得ないか)を、ダンスと演劇を混在させたスタイルで考察している。溝と高さを巧く利用した舞台は、ダンサーの身体を様々なものに見せており、また舞台奥に天井からぶら下がったオブジェも含め、個々の要素が観客の想像力を刺激していた。出演者たちのダンス、ムーブメントは、ドラマ的に(すなわち『砕かれた四月』のストーリーに沿って)解釈することも、あるいはそこからズラして読むことも可能なものとして展開されており、そのように行き来する観客の思考は、作者が『砕かれた四月』を読解する思考と恐らく重なっているのだろう。舞台芸術を通じて読解の作業を共有している感覚が楽しかった。
     しかし、応募書類に書かれていた作品創造の意図、目的がはっきりしていただけに、本作品が果たしてその目的に到達できていたかはやや疑問が残る。テクストと祖父の存在が有機的に結びついていたかも含め、自身と物理的、歴史的、心理的距離のある出来事を関連づける手つきとして、今回のやり方が有効であったとは必ずしも言えないのではないだろうか。巧く重なる瞬間もなく、かといって完全に客観視できるほど離れることもない、中途半端な位置付けになってしまっていたと言わざるを得なかった。

    0

    2022/06/16 03:11

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大