オロイカソング 公演情報 理性的な変人たち「オロイカソング」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    性犯罪の影響を、被害者だけではなくその周辺も含めて描いた、時宜を得た作品である。

    ネタバレBOX

     #MeToo運動をはじめ、性犯罪の告発が急増する現在において、本作のテーマが重要であることは自明である。したがって、そのテーマを「いかに」描いているかが評価の際に重要な要素となる。だが、本作品は描き方としては比較的ドラマであり、オーソドックスなやり方だった。主人公をはじめとして登場人物への感情移入を促す展開、演出がしばしば見られ、性犯罪の被害者である登場人物が葛藤する様は確かに心が動かされた。しかし、思考よりも感情の方が刺激されることにより、性犯罪というテーマを消費する方向に行ってしまっていたのではないかと懸念される。
     興味深い演出は各所に散見された。例えば、人形を用いたり少女戦隊モノの演出にしたりという工夫で、被害者の抱える自責の念やそれを利用した二次加害、それらの克服方法を説明しており、いわゆる「お勉強」的にはならないよう上手く回避していた。だが、工夫止まりでありテーマと深く結びついていた訳ではない。作中で最もノリの良い、楽しかった演出が小道具に過ぎなかったのがやや残念だった。俳優は全員高い演技力が認められたものの、劇場の広さと演技の質が合っていなかったのが惜しかった。中でも梅村綾子は技術の幅広さを感じさせた。別の劇場であれば、あるいは劇場の狭さに合わせられれば、高い評価を得られたのではないかと思う。
     結果として本作は、(恐らく本来は意図していなかったことだろうが)社会に向けたメッセージを伝えるメディアとして演劇が持つ特徴について再考する機会となった。SNSを含む多くのメディアが氾濫する現代において、演劇はどのようなメディアとなり得るのか。その可能性について改めて検討する必要があるだろう。

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    2022/06/16 02:52

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