Anonymous Gods 公演情報 Orgel Theatre「Anonymous Gods 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    上質な大人のお伽話のような…佳作。
    自己の内面を見つめ、他者(同性)との関係をじっくり炙り出す。観念的な描き方であるが、内容は実に心に染み入る。また舞台美術を枠囲いのようにしていることから、カメラファインダーと相俟って女性の内面劇場といった演出で面白い。出演者は女性4人で、繊細な内面と濃密な関係を熱演する。効果的な音響音楽があったら、なお良かった。
    ぜひ劇場での観劇をお勧めする。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    中央奥はモザイクの架かった橋/欄干、それを囲ったような銀支柱。黒壁の豆電球を電飾し夜空イメージ。上手下手の壁には主にモノクロ写真が飾られ、これが物語に出てくる写真家の作品を連想させる。下手には足長のテーブルにティセット。始めは全員黒っぽい服装だが、ダンサーのサラサ(阿久澤菜々サン)以外は上着を着て、別世界から現実世界へ表われた感じ。

    冒頭、サラサが、人の死に方のいくつかを語り出すが、本当は自分自身の生き様を問うているようだ。家族に看取られ安らかな眠りに就く は、後景の電飾と相俟って幻想的でお伽噺の世界へ誘われるような感覚に陥る。朗々とした長台詞は、珠玉の言葉で紡がれ、両手に掬って持ち帰りたいと思う。

    サラサの恋人で彫り師のナオ(木下千加サン)は、自分にタトゥを入れ、自他ともに加虐的な志向(嗜好)を示す。その感情を怖れてか、孤独へ手を伸ばす。
    OLのカスミ(伊藤梢サン)とカメラマンのアオイ(土屋いくみサン)もカップル。2人の間には子供が生まれる予定で、今後のことを考えている。生計はカスミが支え、アオイは自分の納得のいく写真を志向している。2人の関係は秘密にしておきたかったが、カスミがネット上に情報を出し、サラサとアオイが知り合うことになる。
    サラサは35歳、踊れなくなる前に自ら命を絶とうと誓い、カスミに自分の死の撮影を依頼する。そしてカスミは母になること、アーティストとしての意志に疑念を抱き始める。2人の色々な思いが交錯し…。

    4人の女優は基本的に2人による会話劇で展開し、登場しない2人の女優は上手・下手の壁際に座っている。この目立たない中にも情感のこもった(顔)表情をしており、女優魂を観るようだ。女性による2組の同性(愛)カップルだが、その関係が気まずくなった時は、性別に関わらず辛辣な言葉が出てくる。そこに女性だけではなく、普遍的な人間性、関係を見ることが出来る。「誰が養っているのか」等は典型的な詰り。

    心の奥底に潜む”思い”、もしかしたら本人さえも気づかないかも知れない。孤独・不安・焦り・・言葉に出来ない色々な思いが渦巻く。その渦に飲み込まれないように必死で自分らしく素直に生きたい。それを声に出して言えることが大切。気になるのが「子供」の存在。母になる不安のようなものを、生まれたのちの世界ーこの世の不条理のせいにすることに疑問を呈するが…。子にも生まれてくる権利があり、声なき声を消す(無視する)ことは出来ないだろう。

    ラストは、冒頭の「死に方」に対する「生き方」で、悩み・苦しみ・痛みはあっても生きてこそを思わせる。そこに単なるお伽噺ではない深みと滋味が感じられる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/02/25 17:17

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