チョコレート哀歌<東京公演> 公演情報 ノラ「チョコレート哀歌<東京公演>」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     2人称世界作品。

    ネタバレBOX

     板中央に白い様々なサイズの箱を用い、前後のセンターに上り下りの階段を付けた大きな壁を設えたオブジェ。上手にも階段状の構造がありこちらは左右方向、下手のそれは前後で上りのみ。開演前には自動車の通過音が聞こえているが、開演と共にその音は聴こえなくなる。尚、壁部分には模造紙が貼ってあり、絵を描けるようになっている。登場人物は若い女性2人、幼馴染の設定。
     オープニング、暁闇の中、車の擦過音の代わりに溜息のような音。若干受け身の生き方をするユキの台詞が入るがこのタイミング、間の取り方が実に上手いので、演技が自然体に見え、若い感性の瑞々しさが直接的に観客に伝わってくる。脚本の何とも言えない揺らぎのようなものも、若い感性の性質を良く表している。
     これに対しユカリは、折り紙で花を作ったり、絵を描いたりが大好き。こういうことをするエネルギーが横溢しているが、友人関係の齟齬で傷つき易く脆い側面を持ち合わせるアーティストタイプ。当然解放感、自由の虜であるから、自由であろうとすることには極めてアグレッシブである。宇宙の広大無辺・無窮にも想像を馳せ惹かれる。学校でいたずら書きを咎められ大人の枠に嵌った論理で叱責されると、学校へ行く気も失せてしまう。そんなこんなでユカリは学校を休むことが増えた。
    ある時、2人は高い所に上りユキが流れ星を観た。ユカリが願い事をしたか、と尋ねた。この夜2人は、様々なタイプの惑星に想いを馳せ、遂にユカリは落書きをどんなにしても怒られることも罰を受けることも無い星に暮らすことをリアルとして想像してしまった。そしてその時、自由の正体即ち禁止や不自由無しに自由は有り得ないという自由の性質を知ってしまった。そしてユカリは幼馴染のユキの下から去ってしまった。
     残されたユキは、無関係な人間ではなく幼馴染が去ってしまったことによって無限の寂謬と痛切な憂いに沈む。宇宙といい、2人称の関係性といい、逢えなくなってしまった別れといい、どこか「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカムパネルラを想起させる作品だ。

    0

    2022/01/30 10:46

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大