チェーホフも鳥の名前 公演情報 ニットキャップシアター「チェーホフも鳥の名前」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     時代の画期をもっと明確に示さないとインパクトが弱い。内容的には四幕ものなのだが、演出でも脚本でも上記の点が弱い。

    ネタバレBOX

     原因は、チェーホフの捉え方、賢治の捉え方に天才たちの抱える地獄を見て居ない点だと考えるが、この傾向は、休憩前の2幕分に特にハッキリ出た。上っ面をなでているような印象を持ったのだ。休憩後、多少実存的に集約されたが、戦争が身近に迫っている状況との関わりの為だ。
     ホリゾントにスクリーン。オープン時には板上中央に簀子式の平台を据えその中央部に横長のテーブル、テーブル左右と奥に椅子が据えてあり、テーブル上には酒瓶。食器等が各椅子の前にセットされている(場転で平台の上のレイアウトは変わる)何せサハリン(樺太)の19世紀後半から20世紀後半に跨る100年以上の歴史物語なのだ。
     板下手には生演奏用の大きさ、形の異なる多くのタムタム、木琴のような楽器、貝殻を繋いだガラガラのような民族楽器等と横笛(篠笛かも知れぬ)他名前の分からぬ楽器多数、楽器の置かれているのは絨毯の上、少し離れてギター、3名のミュージシャンが生演奏をしてくれるが、女性はボーカルも担当、宮澤賢治作曲・作詞の歌等を披露。こんなに美しい声で賢治の作曲・作詞の歌を聴けるとは思わなかった。賢治は大好きな詩人なので今迄それなりに生の歌唱は聴いてきたが今迄聴いた賢治曲の歌唱では最高のできであった。
     歴史的な激動に翻弄されたサハリン(樺太)は、元々樺太アイヌ、ギリヤーク、オロッコ等の北方民族が住む一種のゾミアであったから倭国(日本)や大陸(ロシア等)と交易をしていて国家という概念には当て嵌まらない島であった。だが欧州の影響を受けロシアも日本も近代国家としての体を為してくると南下するロシアと間宮海峡を発見・命名した日本の対峙する最前線となった。この島の悲劇の始まりである。以降帝政ロシア・ソ連VS江戸幕府・大日本帝国・日本との争奪戦の最前線となったからである。何れにせよこの島が近代の影響を受けるようになって以降は、先住民以外に日本人、ロシアの島流しにされた囚人{主として移住囚(汚職等凶暴な犯罪を犯した訳では無い者)と懲役囚(重犯罪人で更生の見込みが無いと判断された者達)に分けられ、懲役囚は鎖で両手を拘束され炭鉱労働に従事させられた。}、大日本帝国に植民地とされ、日本国籍や創氏改名を強制された朝鮮人等様々な人種が住んで居た。当然、言語も多様なら肌の色、目の光彩の差、髪の色も多様であり、婚姻に関しても他民族との結婚が多かったと思われるのは、作品化されても不自然な感じは全くないことから想像できる。無論社会的ヒエラルキーの差から身分差、教育程度の差、貧富の差等は出て来るし、差別・被差別問題もある。然し現代日本で起きるような陰湿性は無い。また極めて興味深い点が、チェーホフや宮沢賢治がこの島を訪れた史的事実が在ったことである。

    0

    2022/01/29 14:24

    0

    2

このページのQRコードです。

拡大