あーぶくたった、にいたった 公演情報 新国立劇場「あーぶくたった、にいたった」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    今から約45年前の別役実作品を新国立にて上演。「タバコ」とか時代を感じる言葉も
    チラホラありつつ、大体の部分は令和の今でも通じるものばかりで、少しいじれば
    まんま新作という触れ込みでいけそう。

    男1と女1のやり取りとか間とか、「キング・オブ・コント」かと思った。笑いのエッセンス
    かなりあるよな。

    ネタバレBOX

    ある夫婦の結婚時から「死」(?)までの流れを全10話の連作で描くというのが
    大まかな流れ。

    さっきも書いたようにさまぁ~ずか、おぎやはぎばりのトボけた男女のやり取りが
    繰り出される中、2人の子は高校で悪い仲間に入り、ある女の子を妊娠させたあげく、
    殺害したため、一家が破滅するという暗い未来を(妊娠はおろかまだ結婚してない
    にもかかわらず)心配し出すという滑稽かつ不穏な未来話がなされ、

    観客を爆笑させるとともに、どこかいたたまれない気持ちにさせるという、抜群な
    つかみを展開。

    その後夫婦は結婚し、子どもができるものの、ありし日の「予言」をそのままなぞる
    形で非行に走り、手を付けた女子を殺害し、一家は破滅する。夫婦は雨の降る公園で
    毒を飲んで心中しようとするも果たせず、

    そのまま年老いた末に神へ「雪に埋もれて誰にも知られずに消えてなくなりたい」と
    懇願し、舞台上方から大量に降り積もる雪に飲まれるという…ギリシア悲劇ばりの
    悲しさと空虚さで幕を閉じます。

    「かみさま、私たちはふしあわせでした」「でも、そのことを誰にも言われたくは
    ないのです」「かみさま、雪を降らせてください」「わたしたちはこのまま、
    いなくなってしまいたいのです」

    切々と天に向かって紡がれるセリフに猛烈に胸打たれ、神がどうかこの最期のお願いを
    聞き入れてくれないだろうかと心の底で思っていました。結果的にその願いは成就した
    わけですが、別役の分かりにくい「やさしさ」をひしひしと感じましたね。

    あそこで雪が降らないなら、救済をもたらすべき「神の不在」が作中で確定しちゃうわけだから。

    劇場側がいうような「昭和の小市民の閉塞感や苦しさ」というよりは、国とか時代とかを超えて
    人が人として死に至るまで生き続けることのやりきれなさ、「もう終わってしまいたい」と思うような
    漠然とした滅びを望む心(西洋ではタナトスですかね)を描いてるように思いました。頭上の万国旗って
    そういう意味かと思ってた。

    ちゃぶ台とか結婚式の屏風とか、あの辺の昭和日本のクリシェを全排除して、海外で上演した場合、
    この作品がどう評価されるのかめちゃ気になる。別役自身は日本の観客に向けて書いてるはずだけど
    他の文化圏でも通じる普遍性はありそう(言葉の微妙なニュアンスをうまく伝えられれば、だけど)。

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    2021/12/11 07:29

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