玉ノ井家のエンゲル係数(公演終了しました!) 公演情報 劇団ぎゃ。「玉ノ井家のエンゲル係数(公演終了しました!)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    二人の女優魂を見た。
     私も前の人の意見と似ている。劇団名、タイトル、そして何より強烈なチラシのイメージ等から、とびきりのコメディを見せてくれる劇団だとかってに勘違いしていた。

     その先入観が抜けるまでに若干時間を要した。その先入観を除けば質の高い二人の姉妹の心理劇である。あたかも寺山修二の初期の作品を見ているような感じだった。実際に料理を作り、その料理を食べながら、夢の中と現実とが次から次へと交差し、物語は進行していく。

     幻想的な芝居だ。狭い空間をうまく生かし、女優二人だけで独特の世界を見事に作り上げた。 

    ネタバレBOX

     そこで繰り広げられたのは、シュールな心理劇。笑いはあるにはあるが、どちらかというとちょっとどす黒い、少し背筋の寒くなる笑いである。全体として、面白いというより真面目な幻想劇だと思った。初期の寺山修二に似た、独特の雰囲気の漂う芝居だった。

     事故で両親を亡くした姉妹の奇妙な共同生活。この二人の不思議な会話に何故かキューピーの人形がからんでくる。そういえば、キューピーとは天使のことだったのだと想い出す。神としてのキューピー人形と哀れな二人の姉妹の織りなす不思議な不思議な物語だ。

     そこでは夢か現実かわからない不思議な世界が繰り広げられる。登場人物も自分たちが何者か、そして、現在何が起こっているのかわからないのだ。それを探るように過去の日記を一頁ずつひもといて自分探しの旅をする。その当時のヒット曲と合わせて、自分の記憶をたどる旅に出る演出はとても面白かった。

     そうやって記憶をたどっていくと、だんだん色々なことがわかってくる。ただ、それが事実に近づいているのか、妄想が広がっていっているだけなのかは見ている方には判然としない。

     最後に冷蔵庫にあった肉は姉の肉ではないかと想像させるシーンがあり、そして、衝撃のラストシーンにつながる。殺され、食べられた姉が妹の体を乗っ取り、嫌がる妹にさらに食べさせようとするとても怖いシーンで物語が終わる。

     しかし、その食べる食べられる、そして無理矢理食べさせるという関係も、決して憎しみから出てきているわけではなく、愛情の裏返しなのだというところがこの芝居のポイント。

     最後の最後まで何が現実で何が夢なのか判然としなかったが、そういう幻想の中で、二人の女優魂と熱い気持ちはしっかりと感じられた。素敵な劇団である。

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    2009/05/24 01:08

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