ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~ 公演情報 theater 045 syndicate「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

     華三つ☆。役者陣、殊にヤタロウ役、市長役に拍手。彼らの活躍で華を付けた。

    ネタバレBOX

     近未来の戦争で荒み荒れ果てた横浜、力で他人を支配するそんな連中が蔓延っていた。中でもウォリアーズと名乗るグループは勢力範囲も広くハマを我が物顔でのし歩いていた。今作のヒーロー・ヤタロウは、そのウォリアーズに妻を殺された、元オリンピックゴールドメダリストである。射撃の腕に掛けては無双を誇り、妻の復讐の為に立ち上がった。殺した相手は疾うの昔に50人を軽く超えているが彼は殺す前に相手に対してある問いを発する。そして殺された者がやりたかったことを身に引き受けて実現する為に奮闘してもいる。彼に馬鹿という言葉を投げつけてはいけない。度を失ってその言葉を吐いた者を殺してしまうからだ。
     以上のようなキャラ設定の中で物語は進展してゆくのだが、普通復讐するとなったら、そんな情けは絶対掛けないし、相手が出来るだけ苦しんで死ぬような殺し方をするだろう。復讐である以上、それは当然のことである。この辺りの感覚が作家と共通であるか否かで評価は分かれると考える。
     ところで、ウォリアーズという名前やマクベスに登場する3人の魔女よろしく登場する3人組{姉妹と弟(弟は鬘をかぶって女装している)}で多少LGBTqを意識して居るかも知れないがその深い内実は描かれていない。そんなトリオは占い師として登場し、マクベスの魔女同様様々な予言をし、その予言は的中するが、それだけでは単に表層を移築しただけのことに終わってしまう。何となれば占いが信じられるような社会的背景が色濃く出ていないとリアリティーに欠けるし、或はそのような社会的背景を強烈に批評する目で透徹した論理を向こう側に見せていないとパロディーにもならない。単に大衆を小手先で笑わせるだけの小ネタで終わってしまうのだ。その手の小ネタは随所にあった。然し本質に届いていない。主役・ヤタロウを演じた今井勝法さんは心理的なものをやらせてもいい演技のできる役者だと思う。脚本をもっと練って欲しい。でなければ役者陣が気の毒である。他に面白いキャラとしては市長を演じた寺十吾さん。市長の市政方針演説実況中継で、秘書が肝心なことを総て言い、市長は「その通りでございます」のみを延々と繰り返すシーンは日本政治の愚劣そのものをパロっていて面白い。脚本全体をこのレベルにもってゆければ相当の傑作になろう。

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    2021/10/01 06:09

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