ズベズダー荒野より宙へ‐ 公演情報 劇団青年座「ズベズダー荒野より宙へ‐」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2021/09/14 (火) 14:00

    座席1階

     科学技術の発展は軍事と切っても切り離せない。宇宙航空産業も例外ではない。特に、米ソの宇宙開発競争は、相手国にミサイルを撃ち込む狙いがへばりついていて、心ある科学者たちを悩ませた。今回の青年座は、2015年の「外交官」に続いての野木萌葱の書き下ろし。ソ連の宇宙開発をめぐる人間模様を描いた。

     野木作品は「外交官」でもそうだったのだが、息詰まるような会話劇が真骨頂だ。今回、登場する女性は一人しかおらず、あとは全員が男性だ。主人公のソ連ロケット開発最高責任者セルゲイ・コロリョフは、世界初の人工衛星スプートニク1号を成功させる功績のあった人だが、死ぬまで存在が西側諸国に知られることはなかったという。この人物を中心に、第二次世界体制敗戦国のドイツから米ソが奪い合った科学者たちを周囲に置いて、物語は進んでいく。その激しい、息詰まるようなやりとりが休憩15分を挟んで3時間、たっぷり楽しむことができる。

     宇宙開発は人命第一で進められたわけではない。アメリカでもチャレンジャーの爆発事故で7人の乗組員が亡くなっている。ソ連は有人飛行の前に犬を載せてロケットを飛ばしたが、その犬も犠牲になった。この舞台では、革命記念日に合わせて成果を迫る政府に翻弄される科学者たちが描かれるが、せりふの端々にも革命政府のために命を捨てて宇宙に行ったというところがあってとても印象的だ。物が違うといって叱られるかもしれないが、旧日本軍の特攻作戦を連想してしまった。

     野木のパラドックス定数の舞台でもそうだが、野木作品を見ていつも感心するのは、歴史上の人物も含めた人たちの激しいせりふのやりとりをどう、想像して書いているのかということだ。その会話劇は非常に説得力があるし、本当にこのような会話が交わされて歴史が動いていった、というように思わせる舞台である。これだけのせりふのシャワーをこなせる役者たちをそろえた劇団は、限られてくるような気がする。
     青年座と野木萌葱のコンビは、まだまだ見てみたいと思う。

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    2021/09/14 18:44

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