「侠」  君、逃げたもうことなかれ 公演情報 サンハロンシアター「「侠」 君、逃げたもうことなかれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     ホリゾント中央に額に入った「侠」の字の墨書が掲げてあるが、これは今作の展開する双葉デパート・お客様相談室長、九条侠介の名前から摂ったものである。他に舞台美術は下手と上手に丁度司会台の高さほどの所に書類が置けるようになっており、正面だけ目隠しに書見台に直角に延びている部分を除き側面は書見台に向かって斜めになった三角を形成している台。中央には両側面に箱馬収納場所のある直方体。この直方体奥に椅子1脚とシンプルだ。華4つ☆

    ネタバレBOX


     設定で褒むべきは、物語の展開に地方のデパートを据えたことである。言う迄も無くこの設定には深い意味がある。選挙の趨勢を見るまでもなく一般論として都市部より地方の方が保守的であり、産業形態、就労し得る産業の少なさ、それらの産業への就労形態等々からこの保守傾向図式は広く用いられ、指摘したような地方事情形成即ち日本的不条理にも寄与してきたのは衆知の事実である。
     因みに侠の字は俠の俗字にあたり、夾は脇の下に挟むが原義。弱者を庇い抱き抱える力のある者を意味する所から男伊達という意味が派生した。この男伊達に対応しているのが、矢張り侠(俠)の字を用いで表される‟おきゃん“である。今作のタイトルが与謝野晶子の有名な一節をもじっているのと同様、侠(俠)を巡っても言葉遊びが上手に用いられていると言って良い。
     ところで、今作の台詞の中でクレイマーと苦情を述べる客とを比較する場面が出て来るが、イマイチその差が明確ではないように思えた。苦情を述べる客は、企業の気付かなかった改善すべき点を気付かせてくれる意見と室長は捉えておりプラス評価だが、この点を意識した上で社長に見込まれ助っ人として入っている倉持は終盤「それは苦情ではなく、クレーマーですよ」と客に述べていたと記憶する。このクレーマーという表現に引っ掛かった。ここは“言い掛かり”とでもした方が良いのではないか? 
     今作のもう一つの見所が、室長と倉持の方法的差異の対決にあることは言う迄もあるまい。深読みすれば、この点が最も面白く深いのである。余り書くとネタバレになるからここ迄とする。

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    2021/09/04 16:33

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