いのちの花 公演情報 劇団銅鑼「いのちの花」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    実話を元にした舞台。青森県立三本木農業高校、通称サンノウに入学した五人の女子高校生の物語。
    愛犬家、愛猫家の方々は観ておいた方がいい。かなり客席は落涙、全てが全て事実なだけに逃げ場がない。テーマは命について自分の頭で考え続けること。手話通訳付きのバリアフリー演劇である。

    ①記憶力がやたら高い娘(北畠愛美〈まなみ〉)
    ②いつもニコニコしている娘(髙原瑞季)
    ③ギャル(佐藤凜)
    ④眼鏡っ娘(青木七海)
    ⑤ソフトボール(中島沙結耶〈さゆか〉)…素振りが本格的。
    この五人が寮生活を送りながら家畜の世話をする日々が綴られる。自らの手で屠殺、解体を経験させるなど“生と死”と真っ向から向かい合わせる教育方針。愛玩動物研究室の授業の一環として、動物愛護センターへ見学に行った時、衝撃の光景を目の当たりにする。

    裏MVP は手話通訳の田中結夏さんで、六人目のメンバーであろう。只の手話ではなく、劇作に感情移入して一緒に作品を作り上げている。作中人物の一人として物語を伝えようとする熱演。彼女を観ているだけでこの作品の魅力が伝わる筈。終演後、聴覚障害の方達が満面の笑顔で語り合う姿を多数見かけた。全く凄い劇団である。

    女子高生から愛護センターの獣医師から複数の役を自然にこなした佐藤響子さんが良かった。熱血教師役の池上礼朗(れお)氏も印象的。学校公演で場数をこなしているからか、演技レベルの標準値がかなり高い。

    ネタバレBOX

    ボタン一つで何十匹もの犬猫達が二酸化炭素ガスで窒息死。ボタン一つで焼却炉で焼かれ骨になる。その骨は事業系のゴミとして纏めて捨てられる。
    その現実にショックを受けた主人公達。彼等の供養の為にも何かしてあげられることはないだろうかと思い悩む。そこで思いつくのが「命の花プロジェクト」。彼等の骨を貰い受け細かく砕いて肥料とし、マリゴールドの花を咲かせる。
    『死んだ者に生きている者が出来る事は、大切に想うことだけだ。』、この言葉の計り知れない重み。

    脚本の畑澤聖悟(はたざわせいご)氏は凄い、本物だ。かなり考え尽くしている。無惨に虐殺された犬猫の骨を砕き肥料にして花を咲かせても何にもならないだろう。そんなことは判っている、判り切っている。だが他に何も出来やしないのだ。何も出来やしないところから産まれたのが詩や音楽であり絵画や文学、若しくは宗教なのだろう。“無常”と向き合う人間の最後の武器は人生を賭した無力さなのかも知れない。

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    2021/07/14 23:56

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