誰か決めて 公演情報 吉祥寺GORILLA「誰か決めて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     この作家、嵌る人が多かろう。華5つ☆。ベシミル! 1回目追記2021.7.10:15:18 2回目(ラスト追記)7.11 23:48

    ネタバレBOX

    太宰 治に感性が似ているのだ。而もその感性で現在の日本を生きている。一般的かどうか知らぬが、自分が読んだ太宰評で彼は道化を演じたということになっていた。今作で作家が示したのは、もっと現代的な日本での精神の地獄である。現実社会と辛うじて接点を持っている場合には無論、神経症の診断はされてももっと踏み込んだ統合失調症と見做される訳ではあるまい。フーコーの極めて明快な定義によれば“狂気とは純粋な錯誤である”。純粋な錯誤である以上、そのように診断された個々人は総て絶対的な孤立・孤独に封じ込められている。
     ところで、今作の主人公の基本的症状はアパシーに近いのではないか? 自分は心理学については全くの素人だから詳しいことは分からないが総てに意欲を失ってしまった主人公の様子はそのように見える。今作の内容に沿う薬品がどのようなものであるか分からないが、ネットで調べた限りではアパシーに有効な薬は現在の所無いとの情報を得た。従って仮にも完全治癒と診断される為には己唯孤りで社会性迄獲得せねばならない。大抵の薬は一般人からみた発作(奇異な行動や突発的に見える奇矯行動・言説に至るような先鋭化を抑えることしか目指していまい。治療の効果等殆ど無いのではないか? そもそも現代心理学の根底にフロイトが位置付けられておりそれが正当化されているのであれば、それは数多くの実証を基としていなければならないが、果たしてそこに明証性が担保されているのか? 聴き取り等が主であれば、客観性はどのように担保されるのか? 以上挙げたたった2点すら客観的データとして仮に挙げられていないとすれば、フロイトが提唱した論理そのものが、家系的に多産系であった彼個人の悩みに起因する性の問題が抜本的な検証を受けていないことになりはすまいか? トウシロウである自分のこのような仮定に真実性があるようならば、そもそもフロイトの流れを汲む心理学自体を疑わねばなるまい。にも関わらずフロイト系心理学がベースになって現在の心理学が成り立っているとすれば、そこで精神的疾患があるとされ、投薬された患者の身体は如何なる影響を受けるのか? 因果関係に客観性がなく、而も根底にある理論が学会権威に支持され、社会に“信任”されていれば適当な薬を作って売れる製薬会社は濡れ手に粟は必定。最低限そこまで想像力は働いて当たり前である、真実は何処にあるだろう? 人間の物語というだけで優れた今作であり、その点に関する評価は、他の方もしてくれるであろうから、自分の想像力を含めて記しておいた。
     舞台美術も面白い。板上を四辺に区切り一番奥を他の三辺より更に高くし四辺で区切られた真ん中を奈落よろしく穿たれた空間にしてある。その下手、つまり最も高い段に設えられた中央に対して直角に延びた左辺中央から上手に突堤の如く延びた張り出しは人が載っても充分荷重に耐えられる作りになっていて、その下は恰も欧州の集合住宅建築によく見られる中庭の構造に似て、可視化された奈落の如くである。出吐けはこの四辺構造のホリゾント下手。劇の進行の殆どが高くなった空間で演じられるので何処に座っても非常に観易いのも有り難い。脚本・演出・演技・キャスティング・裏方さんの対応も自然で良く優れた舞台である。照明・音響も可成り芝居を拝見している自分ですら殆ど意識しなかった程自然に為されていた。これは特筆に値する。

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    2021/07/10 03:15

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  • みなさま
    ハンダラです。第2回追記遅くなりました。昼は、哲学的研究会の定例集会がズームで開催されて居た為、その為の準備やら質疑応答やらで追われており、追記が遅れました。申し訳ありません。自分のレビューが少しでも集客に繋がって居てくれれば有り難く存じます。良い舞台だったので今後にも期待しています。レビューに演出についての評価点を具体的に書いていませんが、防護服に塵の山がファーストシーンに現れ、意識だけあって体の自由が一切効かない旨冒頭に流れるので、3.11・3.12とも重ね合わせながらイマジネーションを展開する多くの観客を引き込んだと考えます。この演出で一気に観客を引き込んだ点を高く評価します。誤解するのは観客の方ですから創作側が倫理的負い目を感じる必要が全く無いのは自明です。
    最後に皆々様の更なるご活躍とご健康を祈ります。
                                   机下

    2021/07/12 00:02

     みなさま
    ハンダラです。第1回追記しました。第2回は上り次第。

    2021/07/10 15:21

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