花のもとにて春死なん 公演情報 ピープルシアター「花のもとにて春死なん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     とある老人ホームに入居した老人たち。齢を重ねれば誰しもが避けられぬ老いた体を抱え家族と離れざるを得ぬ様々な状況を殆どの者が負って、ここで暮らす。

    ネタバレBOX

    医師・看護士の人数が充分では無い為、入居者の中から代表者や世話人が決められその任に当たっている。彼らの中には寄る年波にも関わらず自らの思惟‣思考を深化させることができずとどのつまり、老い乍ら性に吐け口を求める者、己の性向に身を委ねる者、認知症を患いながらもその事実を忘れ自分達が建てた家に戻りたがる者、自らの生きて来た職業や芸事への未練を断てない者、伴侶と一緒に入居したものの一方は病み、遂には絶命したにも関わらず、精神的苦痛故その事実を認められない者等々、が同じ屋根の下で暮らしているが、彼らの愉しみはタンゴ等のダンスを踊り、生きる実感を手にすることである。然し施設長は、ダンスを禁じてしまう。然しスタッフの数は少なく、老いたりと雖も数の上では収容されている老人の方が圧倒的に多い。そこで数を頼んで再びタンゴの宴が実行されるが、それも束の間、突如日本国では姥捨山法が可決され速やかに実行されることとなった。而も法の実行主体は、各地区の若者に決まった。若者達の判断次第で計画は余計者排除へ向かい役立たない者は抹殺の憂き目に遭うこととなった。舞台上で、銃殺、撲殺等が実行される。如何に舞台上の出来事とはいえ、音響や照明を伴い視覚的にも実見されるこの光景はインパクト充分である。殊に自分の拝見した回は年を召した方が多かったので老いの実感と共に相当のインパクトがあったと思われる。また実際の日本という国は国連に毎回指摘されているように人権感覚というものが極めて希薄な国である。殊に為政者のそれはどうしようもないレベルだ。この実態が民衆に日々経験されているだけに説得力がある。
     タイトルからは誰しもが西行の名歌を思い起こすであろう。老人たちの想いも同じである。せめて死ぬ時には華をその縁としたい。このような念は、憂き世を生きる総ての真っ当な者に共通する願いであろう。死ぬ際にすらそれが許されぬ国、それが現実の日本だ、ということにはしたくあるまい。

    0

    2021/07/02 19:38

    1

    1

このページのQRコードです。

拡大