花のもとにて春死なん 公演情報 ピープルシアター「花のもとにて春死なん」の観たい!クチコミとコメント

  • 期待度♪♪♪♪♪


     今作は3回も再演されてきたというが、拝見するのは初めてで、タイトルから最初に思い描いたのは西行の名歌であった。どんな歌か一応ネットで調べると下の2つを見付けた。
    ねかはくは花のしたにて春しなん そのきさらきのもちつきのころ (山家集)
    ねかはくは はなのもとにて春しなん そのきさらきの望月の比 (続古今和歌集)
     採録された歌集によって表記や読みが異なるのは古典には良くあること。写本等に於けるヴァリアントの差、誤記等の可能性も含めて考えられる理由は数多く、何が正しいかは自筆決定稿がこれだとされるまで定説すら生まれにくい。
     漢字表記した場合に花の下を「した」と読むか「もと」と読むか、も出典により違いがあるようだが、歌の基本的な意味や形は同じだ。ここでの「花」は桜を表していると言い得る。西行の生まれたのは平安末期であるし、彼が桜をこよなく愛したことは多くの歌に詠み込んでいることからも推測できる。また花が梅を指したのは奈良時代のことだ、というのも古典の常識である。歌の意味は簡単に解釈できよう。ただ、その際に注意すべきは死の時期である。釈迦の入滅がいつだったかに関しては諸説あるが、日本や中国では「二月十五日」を入滅の日と定め、涅槃会が催される。つまり釈迦が入滅したとされている陰暦の二月十五日の満月の頃に死にたいと西行は願ったのである。旧暦二月十五日は太陽暦ではちょうど、三月の中旬にあたる。
     さて、話を今作に近づけよう。今作の世界は西行よりむしろ深沢七郎に近い。彼の代表作「楢山節考」に近い世界なのだ。人間のような可成り大きな動物が他の動植物や更に下位に属す諸生物・ウィルスに迄影響を及ぼす活動をし人口を増やし続ける現在、極端に単純化してヒトの人口増加による諸影響(食物獲得・地球資源の収奪に伴う公害・人工的エネルギーによる温暖化等環境変化・重化学工業による環境汚染・電磁波によると言われる回遊・渡り経路の混乱等々枚挙に暇が無い総ての人工的原因)だけをその絶滅要因として人口増加率と他の総ての生き物との関係を考えるなら、冗談では決して済まない本質的な問題なのである。
     一方で極端な効率化が図られ、他方で老齢に因る非効率化が顕著な地域が増大している。後者には、エネルギーを大量消費する地域が多く、貧富の差、教育の差等のグローバルな社会的問題も看過できない重大問題ばかりである。更に地球温暖化の進行は、定説となる程に認められるに至った。温暖化のみならず、環境汚染は深刻なレベルに達し地球環境そのものが危殆に瀕していると見た方が良いレベルに達して居よう。パンデミックが人類全体の問題であるなら、地球に生きる他の総ての生き物とヒトという生き物の関係も、この我等が他の諸生物と共に暮らすたった一つの地域・地球の総てと相互依存関係にあると考えなければなるまい。その時、マイナス原因を作り出す原因が我等ヒトにあるなら、解決責任も食物連鎖最上位にあるヒトが負わねばならぬ問題である。
     今作のタイトルとチラ読みした説明から以上のようなことを考えた。拝見するのを楽しみにしている。

    0

    2021/06/15 17:08

    0

このページのQRコードです。

拡大