INDESINENCE  公演情報 LUCKUP「INDESINENCE 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     良く練られた台本、ポテンシャルの高い役者陣、Covid-19の影響さえなければ立ち見が出てもおかしくない程(この劇場でそれが許されるか否かは兎も角)、極めつけの舞台。華5つ☆。若干噛む役者が居てもこの評価は下せる内容だ。 ベシミル(追記27日22時25分)

    ネタバレBOX


     タイトルからして既に多くの日本人にとって謎解きだろう。従って解答は明かさない。このソフィスティケイトされた台本を極めて優れた読み込みで舞台化した演出、過不足なく演じた役者陣のレベルの高さ、可成り複雑な作品展開を邪魔しないように、而も品格を失わないように設えた舞台美術、筋を浮き上がらせるようにそれ自体は控えめな照明と音響の見事、裏方さん達の気の利いたそれでいて押しつけがましさ等一切ない感じの良い対応。総てが唯でさえ優れた舞台を更に完成度の高いものにしている。
     無論、様々な仕掛けがあり、作家の遊び心が染み込ませてある。例えば那綱の履いているズボンの柄だ(これも、遊び心の一つと自分はとった)。学生探偵という役どころなのだが、大学では伝承文学を専攻しており、この分野では伝承の検証の為に歴史の正史、稗史は当然のこととして秘史、考古学的知識、地政学、天文、文学、古語、郷土史等々様々なジャンルに跨る膨大で正確な知識が必要なことは無論だが、探偵としては同時に瞬時の観察力、洞察、事実を見極め、総てのデータを統合取捨して事実のみを選別し、選別されたデータのみを用いて判断する冷静な判断力が前提となる。さてその推理力をこの作品の舞台になる「緋桜館」に到着して直ぐに示す点等は、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ第1作・「緋色の研究」冒頭でのワトソンとの出会いの場面でホームズがその推理力を示した部分に対応し、緋桜館に同じ緋の字が含まれている点でも今作の作家によるヒントと作中に仕込まれた遊び心を感じるのは自分だけではあるまい。(観客は無論、それに気付きにんまり微笑むという次第だ)また、那綱の親友・慶乃の特殊能力である情報を引き出す能力の高さは、探偵にとって最も大切な能力の一つだが、この点では情報を引き出す前に、先ず自分のありのままを曝け出すことのできる慶乃の力が那綱に勝っている点でホームズにとってのワトソン同様、欠くことの出来ない相棒・助手である点でも両作品が呼応しているということは、今作が「緋色の研究」及びコナン・ドイルへの佐藤信也氏からのオマージュ或は挑戦状ととることもできる。
     但し、今作はコナン・ドイルの亜流作家の作品ではない。というのも事件は日本に今も残る因習が色濃く描かれてもいる作品だからである。土地の旧家・名家の血を引く者達同士の確執が執拗な迄に描かれ、女系家族で当主を務めた実力者男性・金森重鐘の遺産分配を巡る遺書を巡って展開するからである。推理の定番、密室殺人も状況の変化の中で登場する。観ながら観客は自分自身で推理し楽しむことが出来るので、終始良い緊張感が保たれ最高のサスペンスをソフィスティケイトされた時空で楽しむことができる。

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    2021/03/27 03:58

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  • 皆さま
    ハンダラです。追記しておきました。ご笑覧下さい。ホントに素晴らしい作品を有難うございました。

    2021/03/27 22:29

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