カミキレ 公演情報 藤原たまえプロデュース「カミキレ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     極めてバランスの良い作品だ。(追記2021.2.23  2回目追記同日)

    ネタバレBOX

    物語が進行するのは、区役所の戸籍係、区民係の窓口の待合スペースである。区役所の戸籍係や区民係には様々な書類が提出される。そしてそれら書{(生)という漢字を用いた方が寧ろ現実を的確に表しているのではないかとの疑念さえ持つのであるが}類の1枚1枚には、大切な人の死や、皆に祝福されて新たな段階に一歩踏み出す婚姻届けもあれば、逆に幸せな時もあった二人の破綻を正式に社会に対し宣言する離婚届もある。また、書類によっては、親子関係に血縁が有るか否かが分かったり、或は性差を届け出る必要のあるもの迄あるのは、憲法の規定で結婚が両性の同意とされている事等からヘテロ婚しか認められないという解釈が中心になるということを示唆した結果だろう。
     By the way,天皇制でも現在の世襲制でなく選取制にすれば問題解決の糸口の1つにはなろう。敢えて少し脱線した。閑話休題と参る訳にはゆかぬのが本当の所だ。というのも明治が革命だと論じる向きがあるが、自分に言わせれば茶番である。何となればその遂行の主体は下級武士であって当時人口の約90%以上を占めていた民衆、即ち百姓では無かったからである。当時日本の識字率は世界トップクラスである、にも関わらず民衆の代表たる庄屋等は総て武家支配の構造内に組み込まれて機能していたのであり、明治はこの構造そのものを打ち壊し得た訳では無い。だから法制度はヨーロッパの形式を真似たもののその本質を完全にスポイルした謂わば形だけのものにしかならなかったのである、この本質的脆弱性を誤魔化す為にこそ天皇制が数々の嘘の上に構築された。歴史の実態に、切り込めばこのようなことまで考究し得るが、上記のような事例が窓口に提出された書類によって喚起されオムニバス形式で各々の物語が展開する。実に上手い描き方ではないか。端的に言えば今作は、日本の品の良い知的階層の持つ世界観をベースに、より庶民感覚で捉え返された上記深層の反映。即ち暗黒のわが国の歴史そのものを血とするなら、血の上澄みというべき作品である。実際、物語が展開する場を何処に設けるかは、作品をキチンと成立させる為の条件として半分程度を占めるほど大切なことであることは、今更言う迄も無いことだが、このように基本的なことにすら気付かぬ「作家」が多い中キチンとそれを弁えて書いて居る点は高い評価が為されて当然だ。此処に齟齬が生じればそもそも作品自体にリアリティーが失われ、不自然な表現になるからだ。この辺りの勘所をキチンと弁え実践している所に脚本家の賢さを先ずは認めたい。展開や登場するキャラのタイプについてもここに登場する以外のキャラは、そうそう無い。描かれていないキャラとして或るのは日本政府の戦争処理の意図的不手際による犠牲者問題や原発棄民をはじめとする国策棄民問題等であり、今作のカラーにはそぐわない。この辺りの問題は極めて本質的・核心的な問題であるから日本人の奴隷根性にはそぐわないからである。
     (今回は更なる)ところで、この「国」の為政者は“知らしむべからず寄らしむべし”を基本として支配を貫徹してきた。それが奴隷根性に支えられ成功体験として記憶されているから未だにこのアホな発想を改めようともしない。即ちハナから民衆を相手にしておらず「高級」官僚という立場のキャリア組公僕も、公僕でありながら一国一城の主であるかの如き増長振りを示しているのが一般だ。然し今作に登場するのは、区役所に勤める公務員である。こういう人達の中には敢えて出世せず庶民の味方になる立派な人間が実際に居る。そんな現実もキチンと踏まえ温かい作品に仕上げている手腕が、実は何とも言えぬ共感を呼ぶのだ。

    2

    2021/02/16 07:16

    1

    1

  • モリマリコさま
    御挨拶有難うございます。
    可成り長い追記は既に書いてあるのですが、
    深読みし過ぎの感があって少し眠らせています。
    アップはもう少々お待ち下さい。然し、良い作品ですね。
                      ハンダラ 拝

    2021/02/19 15:12

    ご来場ありがとうございました!!

    2021/02/19 04:11

このページのQRコードです。

拡大