短編集「京央円線」 公演情報 京央惨事「短編集「京央円線」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     開演前には、京王井の頭線踏切横の道路を映す映像が流れているが、直前線路工夫達が駅の傍で作業をし、電車が進入してくる際退避する様子が映される。劇団名に呼応する惨事迄連想させて若干緊張感も生まれる。
     4話が、演じられるが舞台の美術空間設定は総て同じ。4x6尺程度の大きさのテーブルを空間センターに設え、長辺に沿って各2脚の椅子、テーブルクロスの色彩、材質のみが異なる。各挿話の進行によりそれが1枚ずつ剥がされてゆく。

    ネタバレBOX


    第1話「パウンドケーキの味」弟 姉
     弟の暮らす東京のアパートに面倒見の良い姉が高崎から訪ねて来ている。洗濯、掃除、食事の準備を週3回以上も訪ねては世話しているのだ。弟は有り難がりつつも、ウンザリしてはいる。この日は休日、弟の通う大学のサークルの後輩がパウンドケーキを作りすぎたから持参するという。姉は誰でも簡単に作れるパウンドケーキ如きで弟をたらし込もうとしている女と判断し面食いの弟に付き合うな、と余計な節介を焼くが、弟の反撃に遭う。其の反撃とは、姉の男の代替として弟を利用するな、ということであった。そのことをやり合う当にその時、パウンドケーキを持った女が訪ねてくる。
    第2話「きみがわるい」
     若いカップル。朝食で出てきた目玉焼きの黄身が潰れていた。調理した女の方の皿に盛られたものはまともである。男は潰れた黄身の料理を彼氏に出すのは愛情が無いからだと責める。然し女が反論するのは、男のだらしなさについてだ。取り敢えずは部屋の片隅に靴下を脱ぎっぱなしにしていたこと。女は一歩譲って皿を彼のものと取り換えて食べ始めようとするが、そういうことではない、と彼が絡む。そんなこんなで、どうでも良い些細なつまずきに腹を立て、男は出掛けようとするが彼女は何時頃帰るか連絡を入れてくれと頼むと、彼は何故そんなことをする必要があるのか絡んでくる。実は知っているのだぞ、と。彼女が浮気をしているとの嫌疑を掛けてくるのだが、2週間前に彼は現場を押さえたと言って、彼女の説明を求める。すると明らかになってきたのは、彼の同僚が2週間前「彼が最近どうしていますか」と尋ねてきた事実、然し訪ねてきた同僚が実は・・・というサスペンス。
    第3話「ライフライン」
     ゲームオタクの若い男の部屋に友人がライフラインになっているコーラの2Lボトルを持って訪ねてくる。訪ねてくる友人はミリタリーオタク。ライフラインを届ける度にゲーム以外には何も知ろうとせず、外に一切出ることも無い友人に外で起こっていることを知らせてくれるが、その情報が嘘かも知れないぞ、と何となく警告を発するようでもある。その情報の中には最近は町中にゾンビが出現し、その頻度が増えていること、襲われると感染してという話が入ってくる。ある日の差し入れは500mlボトルであった。引きこもりの友は足りなかったとか勝手なことを抜かしている、ミリタリーオタクは、明日は無いかも知れないという話をして帰っていった。翌日は2Lボトル。足りなくなった時、自分で買い出しに行こうかと表へ出掛けかけた引きこもりに対し、友は「明日は無い」と言いそれは「ミサイルが発射され30分後に到達するからだ」と言う。既に「住民は同盟国であるインドネシアに避難済み。残る市民は引きこもり唯1人、民兵の1人として訓練を受けた自分はお前の友人だから残った」と言い「何故、お前は自分自身で何が起こっているのか見ない」と責める。
    第4話「ハンドメイド」
     パン工場の休憩室、腕の良い工場長は、その腕と人格から皆に尊敬され慕われている。従業員の若い男2人が食事の為にやってくるが、1人の持参したパンが無くなった。何としてもそのパンでなくてはならない、と言い張る男に対して仲間の男が、自分も買いに行くから序に売店で買ってきてやると出て行く。直後、男の持参したパンにそっくりな形の手作りパンを持った3日も何も食べていなかった女が入って来、食べようとするが、その不格好なパンの形から男はそれは母が作ったパンだと見抜き返すよう求めるが、女は自分の飢えを満たす為、盗んだことを認めない。そこで男はそのパンには毒が仕込まれていると指摘、返すよう迫る。死を恐れて返した女だが、丁度パンを買って戻った同僚から約束のカレーパンを受け取った男は自分のパンが戻ったことから女にカレーパンを与えた。而も自分のパンが戻った男はそれを食べようともしない。実はホントにこのパンには毒が盛ってあった。工場長はこの男の母とできていた。更に彼の憧れている女性をも手に掛けているらしい。そこで彼はこれからこのパンを工場長の所へ持参して食べさせるつもりであった。ところが、彼の憧れの女性は、カレーパンを買って来てくれた同僚と結婚の約束をしていることが判明する。彼は同僚に毒入りパンを食べさせようとする。
    1話から3話迄は、ストレートに現代日本の政治屋や官僚共の腐れ切った答弁の如く地に落ちた詭弁、どうでも良いことを理由とする先延ばしによって大切な問題をうっちゃろうとする人生態度の齎す結果を描いた作品と言えそうであり、4話はその結果の捻りともいえそうだが何れもビターテイストに溢れアイロニカルな作品である所がグー。

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    2020/11/10 02:20

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