桜の園 四幕の喜劇 公演情報 劇団つばめ組「桜の園 四幕の喜劇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    タイトルにある「四幕の喜劇」は、表層的な笑いを誘い喜劇とした訳ではないだろうが、結果的に観せ方(演出)がそうなったように思う。チェーホフの戯曲は、当時のロシアの社会・政治状況を背景に旧・新を代表した人物を登場させ、矛盾した状況を皮肉ることで喜劇化したのではないか。もっとも個人的には単なる喜劇ではなく”悲喜劇”のように思えるのだが…。
    いまだにこの作品が読まれ、上演されるのは、時代を超えてそこに生きる人々の生命力を賛辞しているからではないか。没落富豪(貴族)のラネーフスカヤを始め、未来志向のロパーヒンやモトフィーモフ、登場する人物すべてが何とか生きようとする、その人間洞察、鋭い社会批判を指摘する。そして現代でも色褪せない生き生きとした会話が魅力である。
    戯曲は面白いが、それを体現する役者の演技力に差があるようで、芝居としてはバランスを欠いたようで残念。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    四幕(第一幕:昔ながらの子供部屋内、第二幕:原野、第三幕:客間、第四幕は第一幕と同じ)とあるが、舞台セットは転換しない。基本的には素舞台で、いくつかの箱馬を並べ、その配置の変化で状況の違いを見せる。また何種類かの飲み物で場面を補足する工夫。
    素舞台であるだけに、役者の技量が問われるところ。先に記したように演技力のバランスを欠きかみ合わない会話劇の面白さが十分伝わらない。

    梗概は、没落富豪のラネーフスカヤ夫人は、裕福だった頃の感覚が抜けず、お金を浪費し続け借金だらけ。生まれ育った家、土地ー桜の園が競売にかけられることに…。何とかそれを回避しようとする養女ワーリャ、親身にアドバイスする商人のロバーヒン。19世紀末の農奴解放令後のロシアという背景である。八方塞の状況において、各人が志向する未来も異なる。しかし足元はそれでも逞しく生きる、その共通した思いがラストシーンの救いに繋がる。

    生まれ育った家や土地を失う女主人、その養女で、何とかこの危機的状況が回避できないかと祈る姿、それだけ観ればセンチメンタルになる。一方、商人や学生(ベーチャ)は成り上がり者らしく強か。互いにすれ違う会話がyesかnoの二者択一という限定ーまさしくTo be, or not to be, that is the question.の世界。一方そこはかとなく漂うほろ苦いユーモアが物語の基調を形成しているから悲劇であり喜劇でもある。

    社会的なことは桜の園(自然)を破壊し、金銭のために別荘(開発)を建て金儲けを企てる。過去の栄華にしがみつく人々、一方未来というか目先の金儲けに目がくらむ人々。その短絡的な思いは、別荘開発によってすぐ金が入るが、回復するのに何十年、何百年かかるか分からない自然破壊の代償をもって得たもの。そこに人間の愚かしさ、矛盾を見るようだ。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2020/11/07 21:42

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