楽屋 —流れ去るものはやがてなつかしきー 公演情報 ことのはbox「楽屋 —流れ去るものはやがてなつかしきー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     極めてチャレンジングな公演なのでできれば総ての演出家作品を拝見したい所であったが、(追記第1弾2020.8.26 01:01)

    ネタバレBOX

    自分のような貧乏人には到底叶わない夢なので、最も異色な演出作品と思える公演を選ばせて頂いた。演出が女性で役者陣が男性という舞台だ。結果的には非常に興味深い舞台になっていた。今回を含め、今作は十数回、様々な劇団や演出家の舞台を拝見してきたが、日澤氏の演出が矢張り、No.1 (下北の劇小劇場で公演)、今作がNo.2という高いレベルである。この作品が上演されることは頗る多いのだが、如何に観客に届けるかについては極めて難しい作品だと自分は思っている。無論、チェーホフ作品を演じる花形舞台女優とその楽屋に地縛霊となって「生き」続けているプロンプターとが絡み、更にプロンプター同士の実績、現役時代が絡み、互いの「業績」に対する評価、見得と嫉妬が実に緻密にまた執拗に描かれその内実が役者自身が生きる中で深く共鳴し得る本音であればこそ、今作はこれだけあちこちで演じられ、当に名作と唸らせるだけの内容を持っているわけだ。而も劇中で演じられているのは、チェーホフ。
    舞台美術が素晴らしい。実際、小屋に入って舞台美術が素晴らしければ基本的に内容も良い。今作もセンスといい、機能性といい、上演作品の内容にピッタリ合ったコンセプトといい、美しさ及び劇内容を補完し膨らませ、観客のイマジネーションを上手く更に異次元の時空へ誘う手法といい、見事なものであった。一端を示しておくと上手のホリゾントと板手前の中ほどにはかなり大きく洒落たカーペットが斜め右上がりにプロセニアムアーチに延びている、更にプロセニアムアーチの上手上部コーナーには天井から伸びた豪奢な布がその奥へ向かって垂れ、手前には鏡台が正面に付いた化粧台と椅子が各2セット。更にプロセニアムアーチの向こう側に2セット。鏡台の縁は電飾で飾られているが、鏡は無論嵌められていない。これらの手前にレコードプレーヤーを載せた台がある。翻って下手、下手奥コーナーは、袖口へ向かう開口部、その直ぐ右手にソファ、次に衣装賭けに掛かった衣装、その手前には照明用スタンド、クロスの掛かった小型のラウンドテーブルが置かれ、下手壁際には上手と同じタイプの鏡台セットが2つ並んでいる。鏡台に鏡が嵌っていないのは、鏡に映り込む像が作品に乱反射効果を与えることを防ぐ為であろう。と同時にこの美術の凄さは、プロセニアムアーチに鏡が嵌め込まれているような錯覚を覚えさせる点にある。何故こんなことを言うかといえば奥に手前と瓜二つの鏡台セットが設えてあることに注意を喚起したいからだ。最初、鏡台に鏡が嵌っていないことを見抜いた観客を更に幻想的な時空へ誘う為にこそ、次なる手が打たれていると読むべきだろう。地縛霊も出てくる話だから幻想的な設定は是非必要なのである。こういった所まで舞台美術家が読み込んでいればこその工夫、見事である。

    0

    2020/08/23 01:31

    4

    1

このページのQRコードです。

拡大