第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020 公演情報 シアターX(カイ)「第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 8日目 2020.7.2 19時
     8日目、丁度6,7月公演の折り返し点だ。(次回公演は7月4日14時半の開演)

    ネタバレBOX

    外国からの参加者はCOVID-19の影響で来日は9月の予定だからにゃ。今回も3組が登場。Ⅰ:白野 利和さん、アベ レイさんお2人のパフォーマンス。タイトルは「隣の迷宮2」オープニングで白野さんが登場すると「どうします? 何も決まってないんですよ。ゲネでやったこともうっちゃって」舞台の上に放り出された状態で何をどうしていいか分からないという状況を説明しながらぐるぐる舞台上を歩き回る、極めて示唆的なオープニングだ。そこへレイさんが言葉と音声の間のような表現をしつつ舞ったり弧を描いたりしつつ飛びこんでくる。レイさんによれば、生きることに予行演習は無い。ぶっつけ本番の連続である。仮に予定を組んでいてもぶっつけ本番で何が起こるか分からない時空に身を晒す点では変わらない。それが生きることであるなら、それは迷宮ではないか? と捉えている。つまり今作は、己の迷宮を迷宮として客体化する為に、演じられたと言って過言ではあるまい。だが、そうは言っても2人が時折、交差する中で何やら口をまあるく開けて向かい合ってみたり、何やら鳥が羽を広げるようにも見える動作をしてみたり、意味と無意味が微妙に絡み合うシーンには、サルトルのいう自己投棄を身体化して見せればこうなったと思わせるような形に近い何かを感じた。当然、自由の問題も絡むし、生死の問題も絡む実に面白く、かなり哲学的な作品であった。華5つ☆
    Ⅱ:評論を多く書いている四方田 犬彦さん準備中の新詩集「離火」から数編を選んで朗読すると共に5月14日に亡くなられた財部 鳥子さんを偲んで彼女の長詩の一部分をも読む。四方田さんの新詩集タイトルは音から判断すると鬼才絶と言われた中唐期の詩人・李賀の名に重ねたと見ることができる。27歳で夭折したが、亡くなる前母に「天帝が白玉の高楼を建て祝いの詩を李賀に作らせようとお召しになった」と語ったとされ、“白玉楼中の人となる”という成句はこの逸話から生まれたとされる。
    何れにせよ会場からアフタートークの際に彼のプロフィールに関して出た質問:比較文学とは? に、ホメーロスの有名な叙事詩「オデュッセイア」に出てくるトロイア戦争からの帰途、ローレライを長とするセイレーンの棲む海域に差し掛かる前後の話を持ち出し、船乗りが恐れて近づかぬこの海域に入り、その歌聲を聴けば、余りの美しさに虜となり自ら海に身を投げて藻屑となると伝わる歌とセイレーンの美しさを是非自分は見聴きしたいと願ったオデュッセウスはマストに自分の体をきつく縛り付けさせ、部下には、耳に蝋で耳栓をさせて魔の海に入った。セイレーンの歌声が聞こえると流石のオデュッセウスも縄を解けと大声を出しジタバタしたが船員たちは耳栓をしているから一切聞こえないし、危険海域を出て安全な海域に出るまでは絶対に縄をほどくな、と厳命されていたから解かなかった。そして安全な海域に出た時初めて彼の縄を解いたのであるが、その縄を解くという単語がアナライズというギリシャ語の初出だと説明し、そこから錯綜した状況なり物なりを解きほぐす、というようなことが原義だと話した。そして芸術とは、それを鑑賞する者も下手をすると命を取られかねない或は根本的な価値の転換を迫られるほどのものではないか? との卓見を述べた。然し乍ら彼の詩作品には、このような卓見は残念乍ら反映されていないように感じた。彼は大変な知識量を持つ人だが、それが却ってペダントリーとなって鼻に衝く気がするのである。
     無論知的に武装して箍を外すことは詩の重要な手法の1つではあるが、余りにもぺダンティックになってしまうと例えばRimbaudの有名な一節、s’opérer vivant de la poésie,・・・(生きながら詩に手術され・・・)のような生々しいリアリティーには遠く及ばない。即ち詩行として極めて弱くなってしまうのである。卓見に敬意を表して華4つ☆
    Ⅲ:シアターXアートマイム塾(作・演:JIDAIさん、出演;松沢玲子さん、沢村誠一さん、時任律さん、阿部邦子さん、橋元大和さん)
     ポーランドのステファン・ニジャウコフスキが作り上げたアートマイムという手法でのマイム。その本質は瞬間、瞬間舞台上に存在することにあるという。どうやらE=MC²という相対性理論の根本原理の各項目を移項することによって成立するそれぞれの式ということらしい。エネルギーと光速そして質量の相関関係を肉体に落とし込み以て身体化するということであると理解した。音楽とのコラボがグー。当初、原初の生命体例えば単細胞生物やプランクトンなどが海中や水の中を漂うような動き、或いは羊水の中で系統発生を繰り返した我らの初期胎児期の揺れる夢の如き動きから進化して両生類である蛙になり、更に進化して爬虫類になり更に・・・といった進化の過程に於けるRNAやDNAの揺らめきとも取れるというような極めて興味深いマイムであった。5つ☆

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    2020/07/03 23:07

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