第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020 公演情報 シアターX(カイ)「第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 2日目
     2日目も、出演は3組。出演順にⅠ:加世田剛さん Ⅱ:藍木二朗さん Ⅲ:巻上公一&伊藤千枝子さん 3作品総合評価 華4つ☆

    ネタバレBOX



    I:加世田さんの演目は「Bio」、生命とは何か? 何の為に生きているか? を問い言語化し得ないもの・ことを身体パフォーマンスで表すことを目指した。武術的ダンス劇団“SPINNIN RONIN”を主宰する他、映像・舞台を融合させたパフォーマンスグループENRAのメンバーでもあり、全米武術大会で3度優勝の輝かしい経歴を持つ。
     身体能力の高さ故か、動きに軽みが感じられる。背景に流れる音響は、英語で語られた様々な演説などを分解再構成したものが主で、話者の声質の高低が身体パフォーマンスと可成りマッチし、現代のパフォーミングアーツや二次元芸術の流れともマッチして居る為、自分には情報の海に溺れ漂うépaveのように感じられた。音響に南部の黒人女性シンガーの歌うゴスペルのような憂いに満ち荘重でもある音響を入れ、武術の動きを対比するように剛の動きを入れ、今作の主たる動作であった柔とも対比させたら尚面白い作品に仕上がったように思う。殊に最近の表現は歌唱や絵画・写真・映像など2次元表現にしても、他の現代作品の引用や、コラージュなどが多いように思われるばかりでなく、余りにありきたりで陳腐な価値観に収斂する作品が多いように思われる。バンクシーも結構様々な作品やキャラをベースにするが、彼が根底に持っているアンチ消費社会性や、絶望に打ちのめされた人々の持つ昏い目の描き方の持つ衝撃力、彼自身の視座としての皮肉な眼差しなどが、彼の作品を独自なものにし、際立たせている点で凡庸な表現者の追随を許さないのだろう。日本人の特徴の一つとして体制順応、言い換えれば寄らば大樹の陰的な発想があると考えられるがアーティストにとっては矢張り独自性の方が大切だろう。己の表現の独自性を更に追及して欲しい。4つ☆
    Ⅱ:藍木さんの演目は「変異体少女」当パンの説明には、“一人の少女が、世界に背を向け、サイバーデータ空間に、引きこもった。新たな種族になるために。”とある。が自分は、基本的に当パンを読まずに舞台を拝見し勝手な解釈をするのが楽しみの一つということもあってこの文章を書くまで当パンに目を通さなかったのはいつも通り。で、変異体という単語に接して一番最初に浮かんだのは、F1人災による突然変異である。が作品を拝見しつつ感じていたのは、音響が宇宙飛行士と地球の例えばNASAとの交信のように思えたことも含めて宇宙空間で殆ど絶対的な孤独という体験をしながら無重力空間を彷徨う少女のイメージであった。話は変わるが踊っているのは男性なのだが、セーラー服を着ての踊り方は実に女性的に見えた。ところで歌舞伎では現在女性も男が演じている訳だが、所謂女形の歌舞伎役者に言わせると、女を演じるのではなく、男の中にある男性性を殺すのだとのこと。実際に我々ヒトは、男性であっても女性性をも持ち、女性であっても男性性をも持っている。その身体的特徴を殺すことで己の身体の中にある逆の性を表出させる訳だ。当然、実に自然な演技になる。自然に見える演技こそ、最も難易度の高い演技ということと同義であるから、歌舞伎役者の表現力は極めて質が高い。そんなことも想起させる舞台であった。華4つ☆
    Ⅲ:巻上公一&伊藤千枝子さん。演目タイトルは「チャクルパ5アルハラララーイに声の雨」巻上さんはヒカシューのリーダーとして著名な方だからご存じの方も多かろう。極めて個性的な表現力を持つ多芸多才のアーティストである。ダンサーは伊藤さん。“珍しいキノコ舞踊団”を主宰しダンスは無論のこと、振付・演出・構成まで手掛け国内外で活躍してきた方だからご存じの方も多かろう。基本的には、カムチャッカ半島に住む先住民の祭り・アルハラララーイに呼応した巻上さんの喉声・所謂口琴を用いた音響パフォーマンスなどに、伊藤さんが連動したダンスでコラボするという公演で、お二人の個性が見事に交感してユニークで高品質而も愉しい時空を提示した舞台は流石。華5つ☆

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    2020/06/22 17:07

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