満足度★★★★★
実体験したイジメを昇華していく過程を見る体験は、鳥獣が捌かれる様子を見る時の、恐ろしくも目が離せない心理状態に似ていると思います。それは自分の中に眠る暴力性と対峙する時間でもあるかもしれません。
再再演となる『弟兄』は、これまでとは異なり実名を伏せての上演となりました。初演と再演も拝見していたため、比較するとその影響は小さくないように感じました。エネルギーの向かう先をうやむやにされたような物足りなさもありつつ、それって不必要な刺激なのではと、自分の倫理観とクリエイションへの献身性を試されるような部分があったのは事実です。
ただ何にせよエンタメとしての完成度も高く、演劇には人生を豊かにする力があると信じる方にとってはその確証となるべく作品で、多くの人に観てもらいたいと感じました。