ゆうめいの座標軸 公演情報 ゆうめい「ゆうめいの座標軸」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    『弟兄』。作品として素晴らしかったとともに、この演劇について話すのは難しい。

    というのも……

    ネタバレBOX

    『弟兄』は、作品の呈としては「作・演出・主演の子どもの頃のいじめ体験を加害者の名前を実名で上演して、さらには本人達に怒られたので伏せ字にしたが上演は続けている」というもの。どこまでがフィクションかはわからないのでもちろん全部つくりものの可能性もあるし、すべて現実の可能性もある。

    ……という状況のなかで、観客はおそらく、観劇しながら自身の加害性や被害性を垣間みることになるだろう。

    それとは別に、もし、これがすべて事実だと仮定すると、そこには『演劇の暴力性』がうまれる。この上演そのものが、かつて子どもだった加害者へのひとつの加害であり、それを楽しんでいる観客はその『演劇の暴力性』をうみだす共犯者たりえる。(もちろんあくまで仮定の話ではあるが、ゆうめいはその可能性を残して上演をしている)

    また、(大幅な改定をせずに)再演をしつづけることによって、物語本来の切実性は薄れ、観客個々人のもっている作品の情報は多くなってくる。「作品を見ている」という前提が強くなるほどに、小劇場の客席から動きづらく発言もしづらい観客は「演劇の暴力を浴びている」という状態になる。つまり、再演をするほどに作品の意義や価値が変わってくる演劇ではないかと感じた。

    作品としてのクオリティが高いことは、過去上演の成果や、今回公演のさまざまな感想からもわかるし、私もおおむね同意ですので細かなことは割愛させてください。脚本の構成、照明や音響や美術などをふくむ演出の仕掛け、フィクションとのバランス、俳優の表現力など、どれも魅力的でした。そして、「演劇ってなんだっけ」「表現ってなんだっけ」「芸術ってなんだっけ」という問いドキュメンタリーシアターとしても独自の芯が通っているからこそうまれる力強さがあります。

    批判が多いほど、上演意義の深い作品だと思いました。

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    2020/04/30 18:09

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