揺れる 公演情報 東京演劇アンサンブル「揺れる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     作家の多和田葉子さんと話をする機会が何度もあり、彼女が現在住んでいるベルリンの演劇状況なども聞き及んでいるので今作「揺れる」を拝見して、なるほど、と得心のゆくことがあった。

    ネタバレBOX

    というのも今作の表現方法に極めて実験的且つチャレンジングな姿勢を見るからである。原作者の視座・立場からの射程は、ヨーロッパ全土は無論のこと対アメリカ、プーチン独裁を完成させようと動いている対ロシア、世界の新大国として浮上してきた中国等との現実的政治のリアルな闘場として現実が展開する真っ只中で、争闘するドイツのリアルな生活感覚そのものを描くこと。然し、余りにも多くの、時に拮抗し、また優劣を生じ、EUの牽引役として、世界の各大国の凄まじい、情報戦、スパイ戦等の他、政治的、軍事的、経済的、民族的争闘の央にあって、その収奪の対象となってきた或は犠牲となってきた第三世界からの難民問題を抱えながら日々できるだけ人間的に公平に世界情勢に対応しようとすることが、ドイツ民族或はドイツ国家にとって如何様な責任と可能性を負わせるかについての各階層からの叫びが、実際にドイツの新聞などメディアの一面を賑わした情報そのものの羅列によって描かれることで、通常レベルの常識で判断できる脈絡を見付けることは極めて困難であり、演劇が演劇として成立するドラマツルギーそのものが最初から原理的に存在し得ない。自分が初めに書いた“得心”の内容こそ、演劇そのものをこのような形で否定することにより人々の目を現実世界へ開こうという演劇的企画を原作者が持っており、その点を極めて正確に読み取った演出の公家氏が作品と当に格闘しながら東京演劇アンサンブルというこれまた優れた演劇団体と協同して作り上げた作品だという点だ。通常の演劇ではない。実にチャレンジングな、状況への入り口のしての演劇・問題提起作品である。

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    2020/03/28 15:20

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