冬の時代【3/28-29公演中止】 公演情報 アン・ラト(unrato)「冬の時代【3/28-29公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     流石に木下順二の脚本。骨太で日本の左翼の抱え込まざるを得ない根本的な問題を総て取り込んでいる。

    ネタバレBOX

    サンジカリズム等について触れられる際にも語られていることだが、労働者階級との実質的な連携の無い点は、象徴的にこの国の西欧文明・文化移入の特質及び限界をハッキリ示している、而もこの傾向は残念ながら現在に於いても延々と続いている傾向である。(例えば哲学研究などに於いても大学で哲学を教えている教授の大多数は、単に海外の新しい兆候を持つ哲学者及び著作の翻訳と解釈のみを行い己の思想を立てない。つまりヒトとは何か? 何処から来て何処へ行くのか? なぜ、生きるのか? 生きることに意味があるのか? 等々基本的で根本的な問いを自らの問題としては考えることができないので、総てのことが猿真似に終わる。結果、生活にも己の生き死にを賭けた深い問いに自らの全存在を賭けて答えようとする努力も問い続ける過程で発見できる実に様々な層や可能性についても無自覚で、その無自覚を恥じることさえできない。このような諸々の結果として捏ねる論理の根拠も浅薄で、形式論理さえ整っていれば、論理のオーダーが整ったと勘違いしてしまうから、其処から先は一瀉千里、論理の唯一の展開である先鋭化という道しか辿れないのだ。資本論にしてもカール・マルクス本人が厳しく批判したカウツキー版を翻訳している学者が出てくるが、この辺りも自分が指摘した問題は当て嵌まる部分があろう。また、仮にマルクスが日本に来ていたら、というような仮定を立てどんなことを先ず最初にやるか? と想像力を働かせ、培ってきた本物の思考を用いて社会の諸問題を先ず事実に即して徹底的に調べ、調べた結果を徹底的に分析した上で導き出された結論を如何様に解釈するか? という視点に立つならば自ずと歴史も変わる可能性が増す。)こういったことができなかった日本の左派の消長を描いているとはいえよう。
     舞台は赤旗事件(1908)大逆事件(1910)後、12月31日に設立された売文社(1919.3月迄)に集ったアナーキスト、コミュニストらのイデ闘や主義主張、官憲から睨まれるという共通性を通じ、また新たな女性を目指す青鞜の伊藤野枝などをモデルにしている人物が登場しつつ展開する。因みに千葉は堺利彦、官憲に追われ生活もままならない同士たちの生活を支える為に売文社を立ち上げた訳だ。あとは観てのお楽しみ。各観客の持っている知識や思考によって様々な観方のできる作品である。

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    2020/03/26 16:56

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