成り果て 公演情報 ラビット番長「成り果て」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     満席状態であったが、場内整理も手際良くスタッフがテキパキ動き、適切な声掛けをしてくれるので大入りにも関わらず混乱がないのも良い。
     幕開き前には男女ペアの棋士による将棋解説も板上で行われ、将棋及び将棋界のアウトライン、ルールなどを分かるようにしている点もグー。幕開き後は、場転の殆どを1階、2階の明暗転でやっているので場面転換が非常にスムースに運び観劇しやすい。無論、こういった流れの中にも変化をつけている場面があったのは流石である。この劇団の演目は今の所一応4つということができようか、今回扱われている将棋、少し前から今後もこの国ではハッキリ傾向の出ている老齢化社会問題(殊に介護)、野球、そしてノワール(人間の自然破壊の齎す自然からのしっぺ返し)、更に5番目の用意もあると自分はみているが、今ここでは明かさない。(追記2020.2.9 23:46)

    ネタバレBOX

     何れにせよこのホールに出られるということは、メジャー劇団として業界に認められたと言っても良かろうが、無論、表現者の世界はそんなに甘いものではない。この劇場の舞台に立ったということは、表現する者の宿命として現代ならワジディ・ムアワッド、エドワード・ボンドを始め、唐十郎、別役実などの現役先輩諸氏。寺山修司、井上ひさし、つかこうへいら亡くなりはしたが数多くの作品が上演され続けている諸先輩、阿部公房、木下順二、三好十郎、秋元松代ら錚々たる大先輩を含め今後、古今東西の劇作家の作品群(近松門左衛門、鶴屋南北、観阿弥、世阿弥、ソフォクレス、アリストパーネス、シェイクスピア、モリエール、ラシーヌ、チェーホフ、イヨネスコ、ベケット、サルトル、ブレヒトといった天才たちと)と戦う為のとば口に立ったということだ。総て才能ある表現者は、有史以来の時間・空間を相手に世界を見据えて戦う宿命を負う。日本という小さな国の現代だけでなく世界の時空で羽搏いて欲しい。座長のパースペクティブもかなり広かろう。若手もドンドンチャレンジし、座長を脅かす存在になるよう己の才能を磨き続けて欲しい。
     今作に戻ろう。時代は日本でも漸く電網空間(現在のサイバー空間)が意識され始める頃1990年代中盤に差し掛かる辺りから2000年辺りと考えて良かろう。ウィンドウズ95が発売され日本でも電網空間が一挙に拡大した前後であるが、ユニックスから発展したマックOS,ウインドウズOS,リナックスをはじめとした様々なOSの発展、CPUの発展が話の背景にあるのは無論のことであり、加えてネットワークの発展、ブラウザの発展も一々の説明は為されていないがあることは、観客の皆さんも体験上分かるであろう。(そう期待してもいる。)実際、良いか悪いかは兎も角、インフォーメイションとテクノロジーの進歩は最早止められない。量子コンピュータも配線を量子レベルにまで細くできれば実用化が見えてこよう。そうなれば現在のスパコンなど直ぐ博物館行きである。(オンオフに関しては既にラボ実験に成功例があると聞くし、先だっては量子コンピュータに有利な計算であったとはいえスパコンに買ったとの報道が世界を駆け巡ったことはご存じだろう。)
     但し、これらの技術的進歩を例えどれだけ緻密に正確に描こうとも演劇作品にはならない。人間が介在してこなければ、人々の共感を誘うことは難しいからである。「ターミネーター」のような傑作でも、そこに人間的ドラマを観客が読み込むからヒットしたのであり、それ以外ではない。今作でも、師匠・森の優しさ暖かさと、天野兄妹の兄・高志の森の影響を受けたような優しさや思いやりと勝負の世界の非情、将棋ソフト・ジーニアスを開発した山元と高志との微妙な関係、高志と桂子との切っても切れない関係と兄の無念を晴らそうとするかのように女流名人の座確実と言われながら敢えてより厳しい奨励会の道を選び然も女性初の奨励会出身プロ棋士となった桂子の活躍。最強将棋ソフト・ジーニアスを破りコンピュータとプロ棋士の対決に一役噛んだ高志開発の将棋ソフト開発と高志の癌による死など人生の重大事がこれでもか、という勢いで襲い掛かる。
     その果てラスト、師匠とコンピュータの対決、この劇団の本質、人間を描くことと技術文明の齎すもの・こと・利害との対決でもある。殊にこの作品のよって立つ時代に急速に伸長した新自由主義経済即ち新植民地主義経済は、人々の生活を利便化すると同時に最低賃金の値を世界水準にした。大分以前にも指摘したが、世界中に張り渡されたネットワークによって、ネットワークによって繋がれた殆ど総ての世界から、資源、労働力、運搬その他、製品化する為に必要な諸々を世界で最も安い所から調達できるようになったのである。この結果、製造業ではなく、作るから売れる製造業から、売れるから作れる販売業に資本主義自体がシフトし、更にそれら企業の金融面を管理する金融業が世界経済を仕切るようになったという訳だ。ところが、日本の阿保官僚及び自分の頭を用いて考えることも、民衆の心を理解できぬほど役立たずの政治屋どもも最早如何なる解決策をも導き出すことが出来ぬと思い込んで居る為に、軍事に走っているのだ。頭の悪い彼らにはお似合いだが、我ら主権者が付き合う必要などさらさらない。そのことを明文化し彼ら及び金融界、儲けることだけしか追及することのない資本主義を破壊、再創造せねばならない。現在我らが生きている社会の徹底的な再分析が必要である。このような人間的な価値を気付かせてくれる人間自身の作り出す営為の一つがちゃんと人間を描く演劇などの文化というものなのだ。

    5

    2020/02/09 01:12

    3

    0

  • 鈴木さま
    取り敢えず、お疲れさまでした。
    まだまだ寒く、自分は半分冬眠状態ですが
    お互い、毎日勉強して参りましょうね。
    好きなことの為に、勉強するのは、少し
    大変な時があっても、基本的には楽しいもの。
    知的に楽しみながら伸びて参りましょう。
    お体、気をつけてくださいね。
                  ハンダラ 拝

    2020/02/12 10:25

    ハンダラ様
    ご来場ありがとうございました!
    ご感想もたくさん書いてくださり嬉しいです。ありがとうございます!!

    2020/02/12 09:42

    皆さま
    ハンダラです。追記しておきました。
    ご笑覧ください。
                  机下

    2020/02/09 23:47

    えざきさま
     いつもありがとうございます。
    えざきさんたちの大活躍もあって、
    いつも良質な劇空間を楽しませて頂いています。
    こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
    もう少し、原稿を見直してから追記しますね。
    ご笑覧ください。
                 ハンダラ 拝

    2020/02/09 23:21

    ハンダラ様
    今回もご観劇いただきありがとうございます!
    細かな部分まで観ていただけて嬉しいです。
    今後も将棋以外の作品も上演していきますのでよろしくお願いします!!

    2020/02/09 13:53

このページのQRコードです。

拡大