ストリッパー物語 公演情報 URAZARU「ストリッパー物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     余り一般の人々に気付かれないことから書いておいた方がよかろう。

    ネタバレBOX

    差別は実際には極めて微妙なものだ。ヘイトスピーチの如く、どんなに鈍感で自分の頭で考える力の無い者にも露骨にアピールする力だけある政治的言辞というものはある。しかし実際に差別を受ける者にとって差別というもの・ことは無論、ヴァイオレンスや虐殺が無いではないが、日常生活の只中で遥かに深く静かに被差別者の精神の屋台骨を蝕む獅子身中の虫、油断すれば己が思考さえ差別者の思考に重なる。当然のことながら差別する側の者の殆ど総てが差別のこういった構造に気付いていない。
     今作で最も緊迫した場面が連続するのは序盤から、彼女の病変にヒモが気付く辺りまでであり、終盤失踪した彼女が最後に大阪のストリップ小屋で発見される一件を除けば、終盤は、つかが一般向けに極めて分かり易く解説して見せているということになろうか。
     この辺りのことをキチンと読み取ることができる観客には、売春捜査官や熱海のように顕在化された差別ではなく、見えぬ差別の根深さと地獄をこれほど見事に描いた作品の名作ぶりが感じられるであろう。その証拠に「落ちて落ちてどん底迄落ちて選ぶことを止めた」と、選ばされることを逆手に取って起死回生の一手を打ったヒモの、総てを許すことによって、否それを自ら選び取ることによって、人間としての最後の証明、即ち優しさを命を賭けて獲得したストリッパーとヒモの差別構造そのものを相対化しようとする営為の持つ優しさの意味する所は分からない。
     演出、演技、照明、音響何れも高い評価を与えることのできる舞台であった。

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    2020/02/01 10:48

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